抗菌剤の適正使用も議題にした「伊勢志摩サミット」を機会に本当の適正使用を!(NEWS No.489 p04)

ニューキノロン、フルオロキノロンは、(かぜ・上気道炎はもとより、)副鼻腔炎・中耳炎・気管支炎へも、他に選択肢がない場合以外は使うべきでない(FDAの警告)
抗菌剤の適正使用も議題にした「伊勢志摩サミット」を機会に本当の適正使用を!

5月12日に、米食品医薬品局FDAがレボフロキサシンを含むフルオロキノロン系剤の「安全情報」を更新し、この種の抗菌剤が、重大な永久的障害をもたらすことがあるので、(認可されている副鼻腔炎、気管支炎への)これらの薬の使用は、他の治療選択肢がない限り、リスクが利益を上回るので使用しないように警告しています。また、このことを添付文章に表示することを求めています。

さらに、FDAは患者に対して「フルオロキノロン系薬の服用中に腱や筋、間接の痛みの他、ちくちくするような痺れや指すような感覚、錯乱、幻覚などの重篤な副作用があった場合はすぐに医療機関に連絡」を求めています。これは、従来強調されていた関節系の副作用に加えて、神経系の副作用にも重点を置いた警告といえます。

フルオロキノロン系には、モキシフロキサシン、シプロフロキサシン、オフロキサシン、それにレボフロキサシンがあります。
日本で販売されているニューキノロン系の中で、最も販売額が高いクラビッドがレボフロキサシンです。以前から、「薬のチェック誌」が神経系などの副作用に警告を発しているにもかかわらず、単なる風邪と思われる患者に投与され続けているようです。

フルオキノロン系も含めて、ニューキノロン系の薬は、クラビットの335億円(2,013年)を筆頭に上位3種で555億円
(5種で660億円)です。セファロスポリン系は多数の種類が出ていることもありますが、上位3種で380億円ですから、単価が高いことを考えても、重症患者や、他に治療法がない患者に限定されて使われているとは、とうてい思えない額です。

私たち小児科医は、ニューキノロン系を使うことはほとんどありません。それは、これらの薬が関節の軟骨を傷害するために、15歳以下には基本的には禁忌になっているためです。

しかし、2,009年にニューキノロンとして「世界に先駆けて」日本で初めて小児の肺炎と中耳炎に適応を持つオゼックス(トスフロキサシンドシル酸塩)が認可され、耳鼻科を中心に盛んに使われるようになっています。肺炎は数少ないので使われる頻度は少ないと思いますが、中耳炎には頻繁にかかります。しかも、中耳炎に抗生物質は、痛みの改善以外は効果がありません。そこで、「他の抗生物質が効かない」としてオゼックスを使うことになっているのかも知れません。この薬の注意項目に「傾眠」があり、他のニューキノロンと同様の神経系統への副作用が出現するものであり、それだけでも使用が厳重に限定されるべきです。

今開催中の、伊勢志摩サミットで、抗生剤の使用適正化の取り決めがなされるとのことで、私もマスコミの取材を受けました。乱用されるのがわかり切っているオゼックスを世界に先駆け中耳炎に承認するなど、抗菌剤の乱用を奨励するような日本政府が、率先してその適正使用を推進するとは思えませんが、このイベントを機会に抗菌剤の乱用に注意を喚起するようにしたいものです。

はやし小児科 林