9/8避難者こども健康相談会セミナー報告(NEWS No.493 p06)

第10回「避難者こども健康相談会おおさか」が9月18日に執り行われました。この日は、午前中にセミナーを行い、福島から避難している阿部周一(現 大学生)初監督、ドキュメンタリー映画『たゆたいながら』を上映。

福島県に留まる生活を選んだご家族の話しや、先に母子避難され、1年後、母子の元へ引越されたお父さんが語る、ひとりで福島に残り生活してきた心情が色濃く映し出されていました。映画を観賞された避難者の反響も良く、何度観ても感慨深い映画です。

続いて、医問研の高松医師による福島県民健康調査・甲状腺検査の概略について、お話をして頂きました。いかに福島県のこども達の甲状腺ガンが多発であるか、データを元にお話しくださりました。そんな中、甲状腺検査の縮小を図ろうとする福島県と県民健康調査に対して、縮小する理由として挙げられている過剰診断についても、これまでの手術を要した症例の説明を問うものである、と述べられていました。今後も増え続けるであろう小児甲状腺ガンが、2017年3月末をもって避難者を福島に帰還させる動きの歯止めにならないよう、それと、2020年のオリンピックに向けて福島安全宣言を掲げる為にも、小児甲状腺ガンの数値化は福島や国にとっては見えないものにしたいし、話題にも上がらないようにしたいのでしょう。

未だ、福島第一原発事故は収束しておらず、今後現れるかもしれない疾病に対して不安を持つのは当たり前の事です。子どもの健康を第一に考えて避難されたご家族にとっては、健康相談会が「いつでもなんでも相談できる場」として存在する事が、心の拠りどころにもなっています。避難者に寄り添える健康相談会として、この先、必要不可欠になるであろうと感じました。

斉藤さちこ

<映画『たゆたいながら』の紹介>

監督が育った福島県福島市は、福島第一原発事故後の避難区域には指定されなかったが、街の至る所に放射線量表示機が設置され、レンタルビデオショップでは線量計が貸し出されている。すっかり「日常」に忍び込んだ「非日常の風景」を前に、震災の日、自宅にいなかった監督は戸惑いながら、市内に残る人々の声に耳を傾けていく。

(避難者こども健康相談会おおさか セミナー資料の案内文より)