抗がん剤オプジーボ 従来薬以上の効果を証明できず!(NEWS No.495 p01)

オプジーボの薬価が一人3500万、年間1兆7千億と試算されていましたが、値段が高いとの共産党の国会での追及などもあり、50%引きになったことが全国新聞1面などで報道されています。しかし、この報道には重大な問題があります。

まず、10月の欧州臨床腫瘍学会ESMOで、オプジーボは再発肺癌に効果なしと発表されたことが抜け落ちています。
その前から、医問研では薬のコラムで小林氏の適応患者の選択などに対して批判し、例会で寺岡氏が行った批判的吟味も報告されてきました。また、New Eng J of Medicineなどの2つの治験論文では、抗がん剤を使いながら、がんが増悪したグループに、異常に大きな延命効果があるとのデータを紹介しました(これらの報告は医問研ホームページで「オプジーボ」か「ニボルマブ」で検索願います)。
これらの論文では、オプジーボはがんが悪化しない「無増悪」の生存期間を1.8ヶ月(中央値)縮めました。しかし、がんが悪化=「増悪」したのに生存期間が異常に良い人を加えた[全]生存期間が統計的有意に2.8ヶ月(中央値)延びたのです。
他方で、先のESMOで報告された研究の主要評価項目は「無増悪」生存期間(PFS)であり、オプジーボのNEJM論文での「増悪生存率」を含めての評価ではありません。
ですから、ESMOで発表された[効果なし]とした「主要評価項目」では、NEJMでも[効果なし]だったのです。ところが、ESMOでの発表はビッグニュースとなり、オプジーボ製造販売元の小野薬品工業の株も発表の日から大幅下落しています。もし、この「主要評価項目」が問題なら、「増悪」した人たちのデータも入れたデータで判断すべきだと、オプジーボ製造販売元の小野薬品工業・ブリストルマイヤースクイブから激しく反論されるはずでが、していないようです。また、今年8月5日に2社は、オプジーボは肺癌の初回治療「無増悪生存期間」を従来薬より延長することができなかったと広報をしていますが、評価項目についてなんら言及していません。
https://www.ono.co.jp/jpnw/PDF/n16_0808.pdf

そうなると、NEJMの論文の結論「オプジーボはdocetaxel より統計的有意に生存に寄与する」とする結論と矛盾します(要約では「全生存率で」とは書いていますが)。
これらの事実は、オプジーボの問題は、治験対象集団の問題だけではなく、意図的な操作の可能性も示唆します。タミフル事件でも、公開されないデータが備蓄の根拠となる論文に使われていました。オプジーボも、全ての生データの公開と、それを公的な機関で分析する必要があります。なにしろ、5割引でも1兆円近い公費を使う可能性のある薬なら当然その様な手続きが必要なことは、タミフルの例でも明らかです。
こんな怪しいオプジーボを世界で初めて異常な高薬価で承認したのは、安倍内閣です。その効果も怪しいことに目をつむり、5割引があたかも安倍内閣の手柄のように描くことは、国民の予算を無駄使いした人を、褒め称えるようなものです。日本の薬剤審査が、製薬企業のいいなりになっている現状を問題すべきです。

はやし小児科 林 敬次