2月20日、福島県県民健康調査の2016年12月31日までの集計結果が発表されました。前回発表分は高松氏がまとめて報告したものとほとんど同じです。今回は発表された3巡目は、診断確定数が少なく甲状腺がんも発見されていません。
このページでは、本格検査の意味について、もう一度考えてみたいと思います。1巡目(「先行」)は、2011年、12年、13年地域にわけられていますが、2巡目は11年と12年の地域をひとまとめにして2014年分として、13年分15年分として報告されています。
2巡目以後の特徴は前回がんが見つからなかった集団から、一定の期間後にがんがどれだけ発生しているかがわかることです。
年間の発生率を知ろうとすると1巡目と2巡目の間の年数が必要です。そこで、それぞれの検査が行われた時期からおおおその年数を決めてみると、「先行検査」の11年度の2巡目は2.5年後、12年度は1.5年後になり、13年度は1-1.5年後になります。
その結果は表のようになります。
本格検査結果 | 2014年度検査 | 2015年度検査 | |
2011年度地域 | 2012年度地域 | 2013年度地域 | |
対象者 | 49,454 | 166,758 | 164,406 |
1次検査実施者 | 34,552 | 124,596 | 111,341 |
2次検査対象者 | 344 | 963 | 919 |
2次検査実施者 | 299 | 786 | 685 |
がん | 17 | 35 | 17 |
対10万 | 49.201 | 28.09 | 15.27 |
対10万年間発見率 | 19.68 | 18.73 | 10.18 |
全国平均対10万0.5の何倍か | 39.36 | 37.45 | 20.4 |
11年度の地域でのがん発見率は対十万17÷49454*10万=49.2、それを1巡目からの期間2.5年で割りますと年間罹患率は19.7、同様に12年度地域の年間発見率は18.7(期間1.5年)、13年度地域10.2(期間1.5年)です。この年齢層の全国平均は0.5ですから、11年度、12年度、13年度地域では、それぞれ全国平均の39.4倍、37.5倍、20.4倍という驚くべき倍数になります。症状のないがんが、平均4年後に症状が出るとしても、全国平均の5-10倍程度になりますので、増加は誰の目にも明らかです。
次に、2巡目に発見された甲状腺がんが1巡目ではどのように評価されていたか、を極簡単に紹介します。図のように、2巡目で発見されたがんは、1巡目で全く正常な甲状腺だったA1の人たちから32人(図の点線部分)、5ミリ未満の硬結か20ミリ未満の嚢胞ありのA2の人たちから31人(図の実線部分)、一次検査ではがんが疑われたが精密検査ではがんはないとされたBの人たちから5人発見されています。
多数のがんが、極めて小さながんまで見つけるので「スクリーニング効果」だと福島県や環境省が決めつけているほど精密とされる1巡目の検査を通り抜けている子ども達から発見されているのです。それらは、少なくともこの1-3年の間にがんが急速に大きくなったことを意味します。
以上より、がん多発の原因は原発事故と考えられます。
はやし小児科 林、入江診療所 入江