第11回避難者こども健康相談会おおさか開催される(NEWS No.501 p05)

4月29日大阪市内で避難者こども健康相談会が開催されました。
午前中は、セミナ-が行われ、医問研の森国悦さんが講演されました。講演内容は「日本の福島原子力発電所事故により汚染された県・都での周産期死亡の増加」です。昨年10月に医学雑誌メデイシンに投稿された著者でもある森さん自らが、「福島原発事故後、流産・乳児死亡率と周産期死亡率が増加したことをドイツ・日本の共同研究で明白にした」ことを報告されました。内容の概略は、本誌でもすでに掲載されてきましたが、2001年から順調に減少していた周産期死亡(妊娠22週から生後1週までの死亡)率が、放射線被曝が強い福島とその近隣5県(岩手・宮城・福島・茨城・栃木・群馬)で2011年3月の事故から10か月後より、急に15.6%(人数としては約3年間で165人)も増加し、そのまま2014年末まで推移しています。また、被曝が中間的な強さの千葉・東京・埼玉でも6.8%(153人)増加、その他では増加していませんでした。これは、チェルノブイリ後に、ドイツなどで観察された結果と同様でした。また、「日本における死産、周産期死亡および乳幼児の死亡-2001年から2015年にかけてのトレンド分析のアップデート」も報告されました。

この様な内容は本年4月の日本小児科学会で報告したのですが、その際の反響に関して会場から質問が出ました。学会の総会(全国の医学部の小児科教室の教授や主要小児病院の医師が300名を超えて出席)の場で、小児科学会という学術集団として事実に基づき健康被害の検証をすべきであると追及したことを報告しました。「医師の頑張りが聞けて溜飲が下がりました。」「被ばくによる健康問題にもっとも関心があります。専門家である医師の先生のお話を直接お聞きできますのは、とても勉強になります。」「周産期死亡の話はウェブサイトで見ていましたが、目の前の詳しい説明がよくわかりました。」などの感想が返ってきています。

次いで、大阪青年司法書士会所属の相談会スタッフから、震災・原発被災者に寄り添って~ 継続した、被災地の取り組みの報告がありました。事故後6年間、現地の避難住宅などを丁寧に巡回し、被災者に寄り添う取組に、共感が広がりました。

最後に、避難者からの訴えとして、福島県郡山市からの母子避難者から訴えをしていただきました。国の放射能汚染や健康被害は知らせない、調べない、避難者は助けないという国の理不尽な政策に対して、子どもたちの健康と未来を守るために母子避難を続け頑張っておられます。原発訴訟を通して、「避難の権利」を確立し、避難した人も、とどまる人も、帰還した人も、皆が同じく従来の「ふつうの暮らし」を取り戻し、憲法で保障された基本的人権の回復を、裁判所と社会に訴えられています。

午後の相談会は、予約制で医師との個別面談が行なわれました。その他フロアーでは、アロマハンドマッサージ、司法書士による法律相談、交流茶話会の部屋やブースが設定され、各避難者家族が、置かれた境遇や生活の現状を語り合われ、交流が行われました。

たかまつこどもクリニック・高松勇