500号記念シンポ 高橋晄正氏の理論と実践を踏まえEBM発展を(NEWS No.504 p01)

日本のEBMの創始者ともいえる高橋晄正先生の著書を見るために秋田に行ってきました。

以前からの医問研のメンバーで高槻赤十字病院内科医として働いていて、現在秋田で開業している和田医師に、高橋先生の生まれ故郷「角館市」などを案内してもらいました。

もちろんメインの目的は、秋田県立図書館に集められている高橋先生の著書を見に行くことでした。特に、高橋先生が筋短縮症の原因が筋肉注射であることや、アリナミンやグロンサンに代表される「大衆保健薬」やインフルエンザワクチンが無効であること、晩年まで続けられたフッ素に様々な毒性があることなどの証明に駆使された推計学・疫学についてのどのような本を書いておられるのかにも興味がありました。

高橋先生の分析方法を理解するために、先生にその教科書を書いて欲しいとお願いしたところ、私の具体的な分析から学んでください、と言われました。それで、先生は教科書的なものは書いていないと思っていました。しかし、「医学及び生物学研究者のための推計学入門」1951年、「計量診断学」1969年など自著や共著、またメイランドの翻訳「医学における統計的推理」1962年などを書かれていました。今回はこれらの本を見せていただき、改めて高橋先生の依って立つ学問の確固とした基盤を知ることができました。

私は、課題に取り組んで壁にぶつかると高橋先生の一般向けに書かれた本を熟読して、答えをだしました。例えば、日本の薬剤評価でほとんどの薬剤認可に使われてきた「全般改善度」の問題点を理解することができたのは、「漢方薬は効かない」など漢方薬に関する本を読んでからでした。それを少し進めて、「全般的改善度」による評価と他の比較的客観的な評価方法との比較(喘息に対する「抗アレルギー剤」)、「全般改善度」でのいくつかの評価項目を比較(「脳循環代謝改善剤」)して嘘を証明する方法でした。これに関する文章を高橋先生に直接校正していただいていましたが、いまだに出版できていません。高橋先生には申し訳なく、先生お墨付きの文章を何らかの形で公表したいと考えています。

その高橋先生から、私たちがコクラン・エアウエイーグループの助けで、書くことができたコクランレビューなどの分析をほめてくれた手紙をもらっています。特にコクランレビューを高く評価して、もっと早く知っていれば、と書いておられます。

今や、世界の科学者と連携しての科学的取り組みにより、グローバル巨大企業などの非科学性を世界に認めさせ、改革する可能性が高まっています。そのために、私たち市井の医療関係者もそれぞれの立場で、高橋先生の業績の延長線上にあるEBMの強化が必要です。

今回、500号記念シンポジウムが、日本の科学的医療を推進された高橋先生の理論と実践をさらに発展させるための一里塚になるためにみなさんの発表も含め積極的なご参加をお願いします(※本シンポジウムは10/8に終了いたしました)。

はやし小児科 林