くすりのコラム 幼児にブロモバレリル尿素服用させていいの?(NEWS No.505 p08)

先日、薬局に見知らぬ患者さんから在庫確認の電話がかかってきました。医師に欲しい薬の処方箋を書いてもらったものの肝心の薬を置いている薬局がなくて彷徨っている人です。お目当ての薬はイソミタール原末でした。よく電話で聞かれるのはイソミタールかブロバリンで、どちらも催眠鎮静剤で依存性が高く、あまり処方を見かけなくなってきました。

公益社団法人日本精神神経学会から「薬物乱用防止の観点からの販売中止の要望」を受け塩野義はベゲタミン配合錠を販売中止にしました。今年3月で供給停止、来年3月31日で経過措置期間終了という案内を出しています。ベゲタミン配合錠は統合失調症、老年精神病、躁病、うつ病又はうつ状態、神経症おける鎮静催眠 に使用されてきた薬でクロルプロマジン塩酸塩・ プロメタジン塩酸塩 ・フェノバルビタール の合剤でそれぞれ単剤の薬は存在しますが簡単にのめる薬はなくなります。少し前に同じく依存性の高い不眠症治療剤エリミンも販売中止となり、今年の3月末で経過措置期間を過ぎ服用できなくなりました。ベゲタミン配合剤は闇で赤玉・白玉と呼ばれ処方薬を取引していることがよく報道されています。依存性が高く危険なこれらの医薬品の製造中止・販売中止となり、これらに代わるものを探す人達が増えても不思議ではありません。

ブロバリン原末の一般名はブロムワレリル尿素といった方が馴染みあるのですが第15改正日本薬局方からブロモバレリル尿素と表記されるようになりました。劇薬であるブロモバレリル尿素は古くから多くの市販薬に含まれていて大手企業である大正製薬が解熱鎮痛剤として出しているナロン錠・ナロン顆粒にも含まれています。1錠にブロモバレリル尿素200mg含有(15才以上2錠・8-14才は1錠服用・8才未満服用不可)、1包にはブロモバレリル尿素200mg含有(15才以上1包・11-14才2/3包服用・7-10才1/2包服用・3-6才1/3包服用・1-2才1/4包服用・1才未満服用不可)どちらも1日3囘まで服用できると書かれています。

医療用医薬品ブロバリン原末では「不眠症には、ブロモバレリル尿素として、通常成人1日1回0.5~0.8 gを就寝前又は就寝時経口投与する。不安緊張状態の鎮静には、ブロモバレリル尿素として、1日 0.6~1.0gを3回に分割経口投与する 」とあります。 「市販鎮痛剤常用量の服用による慢性ブロム中毒の1例」日本老年医学会雑誌 2001: 700-703を読むとなぜこれが市販品として、また子供に使用され続けているのか腹立たしく感じます。ブロムは蓄積性が高く小児や幼児に服用させると脳へのダメージが本当に心配です。もちろん海外では販売されていません。ブロバリン原末の添付文書では習慣性医薬品・劇薬に指定されている一方でナロン錠・顆粒は第2類医薬品指定され薬剤師でなくても登録販売者であれば販売することができます。添付文書の記載にも大きな差があり同じ薬の説明とは思えません。医療行政は一体なにを規制しているのでしょう?

薬剤師 小林