くすりのコラム 同時接種(NEWS No.507 p08)

同僚ママが我が子にインフルエンザワクチンと他の定期予防接種を同時接種してくるという話をしていました。同時接種は当たりまえになっていることを話す同僚ママの話を聞きながら、大丈夫なのかと心配になってきました。B型肝炎ワクチンが昨年10月より定期接種になり、予防接種は種類がどんどん増え、過密スケジュールになっています。現在1歳までに終わらせる定期予防接種は5種類(DPT-IPV:4種混合を1種類と数えると)、BCGは1回ですが他は1種につき3回ずつ接種するため1年間で合計13回うつ必要があります。定期接種の他に任意接種のロタワクチンを受けるとあと2-3回の接種が必要になります。1年間に予防接種13本、働くママにとって産後職場復帰までに早く終わらせたい大仕事です。

厚生労働省のHPには同時接種について「二種類以上の予防接種を同時に同一の接種対象者に対して行う同時接種(混合ワクチンを使用する場合を除く)は、医師が特に必要と認めた場合に行うことができること」と記載されています。「特に必要」はママのニーズに合わせて判断されていると推測されます。しかし、同時接種の安全性はしっかり担保されているのでしょうか?

ワクチンの製造方法には、ふ化鶏卵培養法・動物接種法・細胞培養法・遺伝子組換え法の4つがあります。 遺伝子組換え法で作られているのがB型肝炎ワクチンとHPVワクチンです。感染性のないウイルス蛋白だけを作り、それを精製して使用する遺伝子組換え法は動物の体内で製造するものや卵で作られるものより安全性が高いと説明されてきました。遺伝子の塩基配列を高速で読み出す次世代シーケンサーの性能が向上し、今まで検出されなかったウイルスゲノムが昆虫細胞発現系のSf9細胞株から見つかったことが報告され、遺伝子組換え法は安全であるという理論の不確実性が明らかになってきました。(J. Virol. June 2014 vol. 88 no. 12 6576-6585 )HPVワクチンは何度もこのコラムで取り上げてきましたが、B型肝炎ワクチンには「害」はないのか検討を試みたものの「乳児突然死症候群」「同時接種」をどう考えたらよいのかわからなくなり放置してきました。

「人間と動物の病気を一緒にみる」バーバラ・N・ホロウイッツ/キャスリン・バウアーズ著に乳児突然死症候群と捕獲性筋疾患(獣医学用語)や警戒性徐脈の関連が示唆されています。捕獲性筋疾患とは、野生動物が捕獲された後に急死する原因となる疾患で心筋や骨格筋に障害が起きるのが特徴です。動物が外敵に襲われる、または狙われたとき擬死反射つまり「死んだふり」をすることがあります。警戒性徐脈は擬死反射や身を潜めるのに有効です。動物の本能が残る乳幼児に、野生動物が生命の危機に直面したときに起こす体の変化と同じことが起きているのではないかと本には書かれています。驚き、恐怖、拘束が野生動物の突然死を招く要因にあげられています。同時予防接種は赤ちゃんにとって驚き、恐怖、拘束そのものです。同時予防接種は本当に安全と言えるのでしょうか?

薬剤師 小林