インフルエンザに関しての検討事項(NEWS No.510 p01)

インフルエンザの流行はそろそろ終わりです。医問研では、今年のインフルエンザ流行前に、その対応をあまり検討していませんでしたので、熱の冷めない間に来年度に向けて検討事項を考えます。

<インフルエンザワクチン>

ご存じのように、日本では不活化ワクチンだけが使われています。この日本製のワクチンの効果が科学的評価方法のRCTで評価されたのは昔の1論文しかなく、結果は効果なしでした。また、高齢者への接種の根拠になっている神谷齋らの研究は、コントロール群に明らかに病気が重い病気が多く、「健康バイアス」の典型例のひどいものでしたので、私たちが小児科学会でそのバイアスの分析を発表したことがあります。

世界的なワクチンはどうでしょうか?不活化ワクチンについてコクランのシステマティックレビューを少し紹介します。子どもでは6才以上への効果が証明されていません。肺炎や中耳炎などの合併症をも防ぎません。2歳未満には効かなかったという1RCTだけでした。健康成人では1人のインフルエンザを減らすために71人に接種する必要があり、入院も仕事を休む頻度も減らせません。

高齢者では、効果なしのたった1つのRCTのみです。このレビューには私から意見を送っています。今も「Feedback」として掲載されていますので、ご覧ください。結論は、効果不明でRCTがもっと必要、とされています。

なお、医問研ニュース本号に、2年連続してワクチンを接種した場合の効果をレビューした論文が世界的ワクチン専門誌「Vaccine」掲載されました。その快挙をされた著者で、500号シンポで報告してもらった森本氏に解説を書いてもらっています。ぜひ、お読み下さい。

<タミフルなど抗インフルエンザ薬>

すでにお伝えしたように、WHOもエッセンシャルドラッグで入院している重症の患者に重症のインフルエンザ感染が疑われる場合だけに使用を限定していることを、キャンペーンしなければなりません。

また、小児科学会の見解に関しては2014年のコクランレビューの結果と私たち医問研の同学会への発表などの影響もあり、他の学会が全く無視する中で、唯一抗インフルエンザ薬の「投与は必須でない」とし、私たちの要望書への回答では「(普通のインフルエンザへの)積極的推奨は・・支持されない」との積極的な見解を表明しています。

日本小児科学会は社会的にも大きな影響力を持つ団体です。問題点はありますが、日本小児科学会のこの見解は、いまだにこの薬を信じ切っている医師や患者・市民に対し、抗インフルエンザ薬の不要を訴える際の大きな力になっています。今は、その積極面を支え、今後もそれを広く社会に広めるべきだと考えます。

はやし小児科 林