「学生時代に主催した勉強会について」- 医問研ニュース500号記念シンポジウム発表者報告その3 (NEWS No.510 p06)

今回私は、医問研ニュース500号記念シンポジウムにあたって、当時の勉強会の概要と、その際に参加者に行ったアンケートの結果と、現在の職場における査読を手伝わせていただいた経験をご報告させていただいた。その内容について報告する。
科学的根拠に基づく医療EBMという言葉を聞いたことがない医療関係者は、最近は少ないと思われるが、大学で学ぶ機会は少ない。私が大学生の時代は臨床実習では、レポートのために論文を引用する必要があったため、皆、論文を検索して引用するものの、自分で引用した論文の価値や、実際にその内容をどのように臨床に応用するのかは、よく分かっていない状態であった。
そのような状況の中で、大学を卒業して実臨床にでる前に、論文を批判的に評価する基礎の勉強をしてみたいという思いがあった。また、タイミングよく、大学生徒会の会費があまり、勉強会開催の資金を調達できることになった。そこから、医療問題研究会の柳元和先生の力を借りて、EBMとは何か、論文をどのように検索し、どこに注目して読むのか、を学ぶ勉強会を開催することができた。
午前午後と1日がかりの勉強会であったものの46人が参加した。
勉強会の事前アンケートでは、使用される統計学も基礎的な単語の意味が分からない、そもそも何故EBMが必要なのか分からないという意見もあった。
アンケートに基づき、検索ツールにはどういったものがあるか、論文の種類やp値といった統計学の基本、Abstractからの論文の選別方法、実際に論文を使っての読み方の練習の4点を中心に講義頂いた。出席者のアンケートでは、満足できたと回答したのが73%と好評であった。EBM勉強会を継続することは講師の調整が困難でかなわなかったが、その後、生徒会主催の勉強会という形を残すことができた。
また、著者は、現在、小児アレルギーを専攻し、勉強している。所属する施設では論文の査読を数編、指導医のもと担当させていただいた。もちろん、査読を依頼された指導医が最終的な結論を下し、editorへの文章を作成しているので、経験のため、査読の疑似体験のようなものをさせて頂いている。しかし、査読者の思考を経験することができた貴重な体験であった。その経験の中で、雑誌掲載となるには、論文の新規性を必要とされることを実感した。これは、一度研究された薬剤手法を再度検討するような研究が行われにくくなる出版バイアスにつながる。実体験から考えることができ、有益な経験であった。
今回の発表では、様々な方から激励の言葉をいただき、身の引き締まる思いであった。私自身はつたない発表であったが、勉強会で他の発表者の発表を拝聴することもでき、参加させていただいたことに深謝している。
房安 直子・独立行政法人 国立病院機構 相模原病院 小児科