震災後8年目、科学的分析と世界の学者との連携を!(NEWS No.511 p01)

東日本大震災・福島原発事故から7年が経ちました。亡くなられた多くのみなさまに哀悼の意を表します。また、心身に傷を残されている方々のご苦労ができるだけ軽くなるように祈ります。

福島原発事故は収束どころではありません。原発の事故処理は、8兆円の予算を組みながら、未だに核燃料がどうなっているのかもわかっていません。除染の効果も極めて限定的です。にもかかわらず、高放射線地域への帰還が強行されています。浪江町のある男性がテレビでおっしゃっていたように「何もなかった」ことにしようとするのが、原発推進派の目標です。

放射線障害の中で最も典型的でチェルノブイリでは唯一国連が認め、福島原発事故後では岡山大学津田敏秀教授が証明した論文を書き、この面で世界で最も詳しい環境疫学者達の学会「国際環境疫学会」の認めた障害である、甲状腺がんの多発でさえ、政府は未だに認めようとしません。ドイツのハーゲン・シェアプ氏と私達による周産期死亡の増過が科学的に証明されていますが、環境省を中心にこの研究を否定するのに必死です。ましてや、福島で生じている広範な健康障害については、まともな調査がされていません。

反原発を訴える学者・医師でも甲状腺がん多発を否定する方が多く、サンデー毎日の記事で私達が批判せざるを得なくなっています。また、ほとんど根拠を示さず、医学的検討なしに障害が出ているとする「学者」や医者が少なからずの影響を与えているようです。これは、周囲で健康障害が出ているように思えるのに、何らの研究もされないことに対する運動の方の怒りや焦りがそうしているものとも思われます。

私達は、たとえ福島原発事故後に生じた健康障害が証明されていなくても、これまでの放射線障害から考えて福島原発事故後に生じている可能性のある障害への調査と対策を求める運動をすることが必要であると主張すると共に、自らができる最大の力で障害を明らかにする努力をしてきました。それとは違い、根拠なしに障害が出たとしてキャンペーンするのは原子力村にとってはもってこいの批判材料です。津田氏や私達の研究に対するようにウソをつかなくても、普通の常識で反論できるからです。

放射線障害を科学的に証明することは簡単ではありません。特に私達のような学者でないグループにとってはそうです。しかし、本当のことを言う学者は多く居るはずです。さらに、世界的に、特にヨーロッパでは多くの権威ある学者が被曝の科学的評価のために闘っています。その方々との連携により、この状況を突破することができると信じていますし、私達は一部その成果を上げています。

医問研は、震災・原発事故後8年目も、被害者の立場に立った科学的な方法で、原発の障害を明らかにする努力を継続します。    はやし小児科 林敬次