サンデー毎日に医問研会員のインタビュー記事が掲載(NEWS No.511 p04)

サンデー毎日の3月18日号に、福島の甲状腺がん異常多発問題に関する医問研の林と高松のインタビュー記事が掲載されました。作家・ジャーナリスト青沼陽一郎氏の3.11フクシマ・カタストロフのいま(下)「「小児甲状腺がん論争の「ブラックボックス」」という4ページの記事です。

チェルノブイリで唯一、事故が原因であることを国連も認めている甲状腺がんの極めて異常な増加が、福島原発事故後にも生じているかどうかは、福島原発事故の全ての健康被害を認めさせる闘いの最も重要な柱です。だからこそ、すでに196人の甲状腺がんが発見され、原発村・政府ももはや隠しようがなくなりながら、「過剰診断」「スクリーニング効果」などのごまかしや、はっきりするにはもう少し時間がかかるなどと、必死で隠ぺいしようとしているのです。

しかしこの記事の中で、反原発の立場を表明している北海道がんセンター名誉院長の西尾正道氏は、(甲状腺がんは多発でなく)スクリーニング効果による発見率増加にすぎない、と述べます。1cmのがんは10億個の細胞からなるので、などとメカニズムから説明を補足しています。次に、日本人は海藻を食べているので、放射性ヨウ素は取り込まないかのように主張します。おまけに、2巡目でも多数発見されているのは、1巡目の検査の「見逃し」だとします。これは、発見された196人中、2巡目・3巡目の81人(4割)が1巡目での見逃しだとするわけで、それはあまりに多すぎます。結局のところ、原発村とほぼ同様の理屈で、いまは放射線の影響について「結論を出せない」としています。

青沼氏は私たち2人に、津田敏秀岡山大学教授のEpidemiology論文などを根拠に、西尾氏の主張に反論し、原発事故による被ばくが異常多発の原因であると主張する文章を割りふってくれており、おおよその反論が記事になっています。
西尾氏は、放射線由来かどうかは「染色体7q11」を見ればわかる、チェルノブイリではその染色体異常は「4割に認められた、福島で1例でも見つかれば放射性由来のがんの可能性を示唆される」としています。このデータは、ドイツのHeß J〔2011〕の論文を根拠にしていますが、これも、結局「示唆される」だけなので「結論はだせない」ことになっています。記事の最終部分、発見された甲状腺がんの人に「将来進行して発症する病変が今回の検査で見つかって、考えようによっては今のうちに対処できてよかったかもしれないね」とするのは、多発して甲状腺がん患者を放射線の被害者と認めないとの言葉ともとれます。

この文章を書いた青沼氏は2013年当時原発事故被害者によりそう大著を出版されている方で、津田教授の論文の正しさを強調されている方です。それでも、この西尾氏をメインに出さざるを得なかったのは、その西尾氏が避難者・被曝者の方々の集まりに招待されてきたことと重なります。それは日本の医学界全体の非科学性を現していると思うと同時に、今回のインタビューを契機に、この状況を若い方々と共にぜひとも突破しなければならないとの思いを強くしました。

はやし小児科 林敬次