避難者こども健康相談会に参加して(NEWS No.518 p07)

この夏に京都と大阪で開催された「避難者こども健康相談会」に参加し考えたことを報告します。
8月19日「第11回避難者こども健康相談会きょうと」が開催されました。「被災地と京都を繋ぐ保養プロジェクト・健康相談会」として2年目を迎えました。福島県と近隣県で放射線量の高い地域で生活する家族を対象に、夏休みに京都に保養に来ていただき、その際に同時に健康相談会を開催するという企画で行われました。

福島県と近隣県で暮らす人々には、安全に住みたい、暮らしたい、子育てしたい……人としての当然の要求、想いがあります。しかし、実際に相談に接し話を聞いてみると、現在の福島では、健康で暮らしたいという想いが押さえつけられ、押し殺され、封印されている日常生活がありました。そして、健康を求める思いの高まりは、想いと向き合い共有してくれる人の繋がり、連帯を求める声になって、広汎な保養を求めるニ-ズになっていました。また、事故後に福島で子育てを迎える世代での関心の高さを感じました。相談会での質問にもみられましたし、福島で行われている保養説明会に若い母親世代の参加がみられると聞いています。

今回の相談会の企画では、相談会に来られたご家族と交流する場が設けられていました。さらに、京都の避難者、原発賠償京都訴訟の原告団が議論を重ねられ、原発事故被災者の想いに向き合う機会を提供されました。避難者と福島に残った者との被災当事者同士の初めて本格的な交流の場となり、今後の繋がり、連帯の強化への足がかりとなっていくことが期待されます。

さらに、京都出身の小児科医の方々が相談に携わられ6年目に入り、相談会協力京都医師団の存在感が大きく確認されました。
9月23日に「第14回避難者こども健康相談会おおさか」が開催されました。大阪の相談会は、終了後に避難者を交えて交流を行いました。健康相談会への関西圏避難者の参加者数の減少(京都、大阪)が話題として上りました。

背景には、昨年3月に自主避難者が暮らす応急仮設住宅の無償提供が打ち切られたことによって、避難生活の基本である住居生活の保障が脅かされ、帰還せざるを得なかった避難者も多く、関西圏での避難者数の減少に繋がっていること。また、甲状腺がんの多発が増強しても報道されない、SNSでも健康被害の話題が減少しているなど、健康被害が見えなくなってきている状況も影響があると考えられます。

大阪の相談会の成果でもありますが、避難し続けている避難者家族を健康面や子育て面で支え続ける役割は参加者が少数になっても継続する必要があること。健康被害が見えなくなっている現状に対しては、甲状腺がんの多発や周産期死亡の増加などの日本発の英文論文の意義を訴え評価を拡大していくことや、様々な健康被害の実態を解明していくことで対抗してくこと、などを強く思いました。

福島では押さえつけられ、押し殺され、封印されている日常の中におかれているが、安全に住みたい、暮らしたい、子育てしたいという被災者の想いと向き合い、共有してくれる人の繋がりの場を求めている被災者の想いに応える重要性。我々の取り組みは小さいけれども、それらを受け止め交流することへの努力を強く考えさせられた「夏の京都、大阪の相談会」でした。

高松勇(たかまつこどもクリニック)