政府は国連人権理事会の声明に従い、高線量地域への帰還政策を直ちにやめるべきだ(NEWS No.519 p01)

10月25日国連人権理事会の声明で福島の帰還問題が取り上げられ、帰還地域の許容被曝量を年20mSv以下ではなく1mSvに下げること、20mSv 以下の地域への子どもと出産年齢の女性も帰還させる政策を止めるように、日本政府に求めました。これには、避難者への住宅手当打ち切りなどの圧力をかけて半強制的に帰還させる政策の批判も入っています。

また、声明は2017年の人権状況審査「普遍的定期審査(UPR)」作業部会が許容線量を1mSvに下げることを勧告し、日本政府はこれをフォローアップすることに同意していたのにこの勧告を実施していないと批判しています。

これに対して日本政府は、ICRP(国際放射線防護委員会)は20mSv以下でよいといっているのだから問題ないと反論しています。ちなみに、2011年に年20mSvも被曝する学校を再開して生徒を戻すようにとの文科省の方針に対し、当時の内閣参与でICRPの委員を’05年まで12年もの間務めた人物でさえ、20mSvはひどすぎると参与をやめています。彼の講演ではせめて5mSv以下としています。ICRPの立場でも20mSvはひどいものなのです。

これらは日本政府が、かたくなに20mSv以下の地域に一般の人を帰還させたがっていることを示しています。それは、除染を繰り返しても、福島県の多くの地域で、被曝線量を年1mSv以下に抑えることができないことの表明と考えられます。

10月25日に日本公衆衛生学会が開催された郡山市の公道の地表約1mの空間線量でも入江紀夫氏の計器では0.15µSv/hでした。この場所に居れば年1.3mSvの被曝をすることになります。公表されている郡山市での学校でもその程度の線量があちこちで計測されています。森林に入るとさらに高い線量を浴びます。これだけの外部被ばくを引き起こすのは、道路表面などに放射性物質があることを示し、それらによる内部被ばくは避けられません。

被曝線量を下げられないが、原発事故は終わったとしなければならないためには、許容被曝線量をどんどん上げて、被曝が普通であるかのように生活することが原子力村と安倍政権には大事なのです。

11月4日の大阪での団結まつりでも、避難者の方々の裁判闘争などが交流されました。避難者の方々を中心としてこの政策との闘いが積み重ねられています。森松明希子氏らの国連への働きかけも大きな力になっていると思われます。国連人権理事会のこの報告は、内外に日本政府のひどい政策を知らせ、海外からのこの政策への批判が高まり、国内でのさまざまな闘いの支えになると思われます。

医問研のこれまでの調査で、数ミリSvの被曝でさえ明白な障害を与えることは医療被曝・チェルノブイリ・自然放射線などで明確です。100mSv以下での障害があることは、広島・長崎の原爆後遺症の調査でも明らかになっているのです。子どもたちにとっては80年ほど住み続けることになる福島です。私たちも再度この帰還政策の中止を強く訴えます。