ACIP(米国予防接種諮問委員会)はその有効性を理由に弱毒生VZV(水痘・帯状疱疹原因ウイルス)ワクチンZostavaxよりVZVの糖タンパクgEをアジュバントで強化したサブユニットワクチン Shingrixを推奨しています。ShingrixとHPVワクチンはアジュバント強化ワクチンです。Shingrixが海外で人気で品薄になっているのは有効性や安全性とは全く違うところに理由があるのかもしれません。
そもそも免疫力が低下して帯状疱疹を発症しそうな人に生ワクチンを使用することや、まだ免疫が高い人にアジュバント強化型ワクチンを接種して安全性に問題ないのでしょうか?ZostavaxはVZV弱毒株・岡株を有効成分とした生ワクチンで日本で承認されている乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」と本質的に同じものです。日本では2016年に「50歳以上の者に対する帯状疱疹の予防」が効能追加になりました。米国では 接種者のなかに重篤な感染を引き起こし帯状疱疹や失明、死亡に至ったケースがあり集団訴訟の対象になっています。 その後、承認されたShingrixは接種部位の有害事象は認めるものの忍容性が高く安全とされています。日本では2018年3月に承認されましたが販売元のGSKと第一三共合弁会社解散に伴い、製品取り扱いが定かではありません。
2016年コクランレビュー「Vaccines for preventing herpes zoster in older adults.」では帯状疱疹ワクチン(Zostavax・Shingrix)とプラセボまたはワクチンなしを比較した60歳以上の試験について評価しています。忍容性に問題なく帯状疱疹ワクチンは帯状疱疹疾患の予防に効果があり、この予防は3年間持続する可能性がある と結論づけられています。ところが、2018年BMJ「Efficacy, effectiveness, and safety of herpes zoster vaccines in adults aged 50 and older: systematic review and network meta-analysis」では、コクランレビューが最大のランダム化試験(50—59歳の参加者22000人を対象)の1つを除外していることを問題として、このレビューでは50歳以上を対象に分析しています。60歳未満や免疫抑制されている参加者の試験を除外したため安全性の検査に必要な観察研究が抜け落ちていると指摘しています。50歳以上で行ったこのレビューでは、Shingrixがより優れている可能性があるが注射部位で高い副作用の危険性を持っていると報告しています。
Zostavaxは、宗教上、倫理上の問題も抱えています。 このワクチンは14週齢の流産白人男性胎児の肺組織由来の線維芽細胞からなる二倍体ヒト細胞培養株:MRC-5で培養し作られています。ヴァチカンは胎児細胞ではないワクチンへの代替え使用を推奨しています。海外で品薄となっているから、コクランレビューが高評価だからと飛びつくのは考えた方が良さそうです。
薬剤師 小林