ギャンブル障害①入門編〜ギャンブルとは、ギャンブル障害とはなにか?(NEWS No.525 p05)

カジノ誘致合戦が過熱するギャンブル大国日本

5/15-16に大阪市で開催された関西IR(統合型リゾート)産業展に海外IR(カジノ)事業者など82社が参加。IR報道も過熱化してカジノ誘致宣伝の様相を呈している。カジノはテーマパークと同様の健全な娯楽であるかのような幻想がふりまかれているが、歴としたギャンブルである。ギャンブル障害(ギャンブル依存症)が拡がれば、疾患や犯罪対策に要する社会のコスト増大や労働力喪失による損失なども甚大となる。実は、日本はカジノ導入以前からすでにギャンブル大国であり、ギャンブル規制やGD対策が放置されてきたことをまず直視しなければならない。

しかし、カジノを含むIR整備の基本方針について、政府が夏の参院選以降に公表先送りの方針を固めたことが5月22日に分かった。カジノ開業には国民の不安が強く、カジノ導入に執心する大阪府市などや政府の思惑通りには必ずしも進められなくなっているようだ。

ギャンブル障害(GD)とは何か?

■日本は国際的にGD有病率が際立って高い

ギャンブル障害(ギャンブル依存症、以下GD)は従来、衝動制御障害のうちの「病的賭博」として国際診断基準(DSM-ⅣやICD-10)では扱われてきた。2013年発効のDSM-5や2019年承認予定の1CD-11では、アルコールなどの物質使用障害(アルコール・薬物依存/乱用)と同様の嗜癖障害である非物質関連障害(行動・過程嗜癖(プロセス依存/アディクション))である「ギャンブル障害」(GD)として概念化し直されたが、すでにGDからの回復に関わってきた当事者や臨床家、回復施設スタッフは「ギャンブル依存症」として理解していた。
2014年の厚生労働省研究班の報告では、日本におけるGDは成人人口の4.8%(男性8.7%、女性1.8%)、536万人と推計され(同報告のアルコール依存症109万人の5倍)、米国(2002年)1.58%、香港(2001年)1.8%、韓国(2006年)0.8%などと比較して際立って高い。

■GDの定義とギャンブル依存症者の特徴

GDとは、ギャンブルが、既に自分に不利益、有害な結果を生じていて、やめたほうがよいと考えることはできても、強烈な渇望により、コントロールができずにギャンブルを反復継続する状態をいう。
ギャンブル行為には以下のようなことが含まれる。①ギャンブルに没頭すること、②自分の望んだ興奮感を得るためにギャンブル投資額を増やそうとする必要性があること(耐性を生じる)、③ギャンブルを管理する、控える、やめようと何度も努力するが失敗を繰り返していること、④ギャンブルが問題から逃避する手段であること、⑤ギャンブルの負けをギャンブルで取り戻そうとすること、⑥ギャンブルにのめりこんでいる行動を隠そうとを言うこと、⑦ギャンブル資金を非合法に賄う手段をもつこと、⑧ギャンブルが理由で個人的・職業的関係が脅かされるか、または失うこと、⑨借金返済を他人にたよること、である。
GDは誰でもなりうる精神障害だが、日本では自己責任が強調され、精神障害であるとの認知度は極めて低く、予防や相談、治療、回復支援の体制は甚だしく脆弱である。

■ギャンブルとは何か

ギャンブルとは「金をかけて金を得ようとすること」であり、日本では「公営競技」(競馬、競輪、競艇、オートレース)と、「公営くじ」(toto(サッカーくじ)と宝くじ)、パチンコ・パチスロが該当するが、いずれも公式にはギャンブル扱いされていない。森山成彬氏の報告ではギャンブルの種類でみると、パチンコとスロット、パチンコのみスロットのみを合計すると82%、パチンコ、パチスロが全くからんでいないギャンブルは宝くじ、賭麻雀、オートレース、花札賭博、野球賭博の4%、違法賭博はわずか7%。

■GDは家族関係の病でもある

病的ギャンブル依存者の家族歴があると、物質乱用や抑うつ障害の発生率が上昇する。患者の両親や影響力のある親族はしばしば問題を抱えていたり、病的ギャンブル依存者だったりする。

ギャンブル依存症の特徴 その1:多額の借金、1200万円を超える額のつぎ込み、配偶者含めた精神疾患
2005年のデータ
平均借金金額:600万円(6割が500万円を超える)
ギャンブル開始平均年齢:20.2歳
借金開始平均年齢:27.8歳
初診時平均年齢:39.0歳
借金の債務整理をした人:28名/100名中
自己破産:4名/100名中
鬱病併発:17名/100名中
アルコール依存:5名/100名中
配偶者65名中10名が精神疾患
ギャンブルにつぎ込んだ金額の平均:1293万円(最高1億1000万円、最低50万円)
出典:森山成彬(2008)「病的賭博者100人の臨床的実態」精神医学50:895-904
■併存疾患

GDは、気分障害(特にうつ病、双極性感情障害)、その他の物質使用、嗜癖性障害(特にアルコール、精神刺激剤[覚醒剤と類似物質]、カフェイン・タバコ依存症で顕著)、注意欠如多動性障害(ADHD)、さまざまなパーソナリティ障害との併存を認める。

■GDの心理社会的要因

GDには誰でもがなりうるが、心理的傾向として自己肯定感がもてないなどの生きづらさを抱えており、ギャンブルで陶酔感、高揚感、安堵感等の快感を知ってはまりやすくなる。GDに陥りやすくなるいくつかの要因として、両親の不和、両親の不適切な養育法、青年にとってギャンブル行為に接したり行いやすい環境、などがある。GDに特徴的な心理状態として、①否認、②自責感、自己嫌悪、③劣等感、敗北感、④孤立と孤独、⑤被害者意識を生じやすい、が挙げられる。

■ギャンブル障害を生じ得る薬剤

JAMA Internal Medicine誌電子版に2014年10月20日に、抗パーキンソン剤やむずむず脚症候群の治療剤であるドパミン受容体作動剤の重篤な有害事象の1つに衝動制御障害(病的賭博[DSM-Ⅳ]=GDを含む)があることが報告された。ドパミンD3受容体への結合親和性が高いプラミペキソール(ビ・シフロール®)、ロピニロール(レキップ®)で特にRRR(比例報告比)が高かったが、それ以外のドパミン受容体作動剤であるカベルゴリン(カバサール®)、ブロモクリプチン(パーロデル®)、ロチゴチン(ニュープロパッチ®)、アポモルヒネ(アポカイン®)のいずれもがRRRの有意な上昇を示した。また、ドパミンD3受容体に対する部分作動剤としての作用も持つ非定型抗精神病剤アリピプラゾール(エビリファイ®)も弱いシグナルを示した。薬剤選択を避けるか慎重な処方が求められる。

■回復に必要なこと

回復にはまずギャンブルを絶つことから始める。GA(自助グループ)への参加、家族の理解と支援、心理的、社会的支援などの多方面での取り組みが必要である。(GDからの回復や治療については改めて述べる予定。)

いわくら病院 梅田

<主な参考文献>
ビッグイシュー基金ギャンブル障害研究グループ 新版 疑似カジノ化している日本 2018/10
九州弁護士連合会 ギャンブル依存症のない社会をめざす宣言 2016/9/23 その他
以上2件はウェブ上で公開
西川京子 知っていますか?ギャンブル依存一問一答 解放出版社 2013/10