ギャンブル障害②ギャンブル依存対策の欺瞞(NEWS No.526 p05)

パチンコ・スロットがギャンブルでない?

日本のギャンブル障害(GD)は推計536万人とされ、世界に突出して多い。GDがはまるギャンブルの8割以上はパチンコ・スロットだ。パチンコ産業は年商20兆円、パチンコ店舗数は1万2000軒でコンビニ並み。全世界のギャンブルマシーン総数700万台中6割が日本のパチンコ機やスロット台だ。しかし警察庁はギャンブルでなく「遊技」とみなし、関連業界が警察官の天下り先になっている。新聞、TV局は広告料収入の重要な部分をパチンコ産業に負っており、パチンコ・スロットによる負債が絡む事件でもGDにまでは言及せず、GD問題の深刻さを隠している。

ギャンブル大国・日本

大阪市営地下鉄(当時)御堂筋線の10両1編成が大手パチンコ店のボディ広告となって走っていた時期があった。当時から大阪市はギャンブルに前のめりだったことがわかる。

日本では689年頃にはすでに最初のギャンブルを禁ずる法律ができ、第二次世界大戦前まで賭博禁止法は生き続けた。しかし、敗戦のわずか2か月後に政府は第1回の宝くじを発行し、競馬が1946年、競輪が47年、競艇が51年に始まり、6種の公営ギャンブルが大手を振って歩くようになった。中央競馬(年間3兆円)・地方競馬(5000億円、ともに所轄は農水省)、競艇(1兆円、国交省)、競輪(9000億円)、オートレース(1000億円、ともに経産省)、宝くじ(1兆円、総務省)、スポーツくじ(900億円、文科省)と、各省庁が胴元となり、官僚の天下り先を提供している。

パチンコ・スロットを合わせると日本のギャンブル総額は25兆円、米国の3倍以上で、すでにギャンブル大国といえるが、さらに刑法で禁じられていたカジノの解禁を国や大阪市などの一部自治体が推進しようとしているのが現状である。

GD対応策として求められるべきこと

GDに関して立てるべき政策上の目標は、①GDの予防・早期発見・治療・ケア・救済を行うための体制の確立、②安全な余暇サービスのための消費者保護の観点から、ギャンブルの現状の全体を見直すこと、である。たとえば、スイス賭博法は、基本に、GDの早期発見、早期介入という明確な原則が置かれ、治療や自助グループへの導入などが法律に細かく定められている。国レベルでギャンブルを統括・監視する委員会が置かれ、これと別にGDに特化した諮問委員会が設けられている。
ギャンブル依存症等対策基本法はギャンブル産業の既得権擁護、対策は自己責任

2018年10月5日にギャンブル依存症等対策基本法(以下、基本法)が施行された。しかし、内閣官房のギャンブル等依存症対策基本法の関係者会議は、当事者・家族の全国を縦断する予防啓発、相談支援を行っている団体を排除し、当事者・家族団体ゼロに対し、ギャンブル産業側からパチンコ、競馬、競艇の団体の長、合計3名が会議のメンバーになり、これらギャンブル産業の管轄省庁も加わる構成となった。ギャンブルをめぐる既得権擁護の本音が露わだ。

基本法はギャンブル等依存症をギャンブル等にのめりこむことにより日常生活または社会施活に支障が生じた状態と定義しているが、やはりパチンコ・スロットは遊技、6種の公営ギャンブルは公営競技として公式にはギャンブルと認めていない。依存症の予防・回復のための対策、多重債務や犯罪等の問題に関する有機的連携を一応基本理念としている。しかし、関係者会議は上記のようにギャンブル推進勢力が多数を占め、拠点となる専門医療機関や相談機関などは整備途上ではなはだ心許ない。

予防事業としてギャンブル等依存症啓発週間の設定や予防教育などを挙げている。文科省の高校生向け資料をみると、依存症の機序や日常生活における障害をとりあげているものの、各自のストレス対処や家庭教育の努力を促すことが主眼になっている。大阪府・市の高校生用リーフレットにいたっては、「ギャンブルは、生活に問題が生じないよう金額と時間の限度を決めて、その範囲内で楽しむ娯楽です」として全く依存症について無理解で、GDによる生活破壊や犯罪などの社会問題も無視している。

カジノを進めてGDのリスクを拡大しながら、名目だけ対策して、ギャンブルに伴う生活破壊や犯罪などの結果は自己責任だとするもので、許されない。国や自治体は、ギャンブル規制機関を立ち上げ、予防・治療・回復のための実効ある施策をこそ強力に進めるべきで、当事者や家族だけでなく地域も荒廃させるカジノは阻止されるべきだ。

いわくら病院 梅田

<主な参考文献>
帚木蓬生 ギャンブル依存国家・日本 2014
臨床精神医学 42(9):1125-1129 2013 など