2019年度AKCDFプリスクールラーニングセンター健診報告(NEWS No.527 p01)

AKCDF preschool leaning centerは、フィリピンのマニラ首都圏の北西部マラボン市のイーストリバーサイドと呼ばれる貧困地区にある未就学児が通うpreschoolです。1988年、一民間人であるフロールデリサ・ガランさんによって設立されました。AKCDFへの医療問題研究会による医療協力は1992年に始まり、毎年入園児健診を行っています。今年度の健診について第一報を報告させていただきます。

今年度の健診は7月13日に開催されました。日本からの参加者は、医師・看護師・歯科衛生士・理学療法士・小学生ボランティアの計6名でした。現地からは、メディカルボランティアの口腔外科医が2名、ラサール大学の学生ボランティアが35名、ロータリークラブのメンバーが10名弱参加していました。

8時半から開始される健診前に、8時ころからすでにたくさん集まっている親子を対象とし、日本人歯科衛生士の岩田さんが歯磨き指導をしてくださいました。歯の模型と歯ブラシ、視覚支援を用いて英語で講義を行い、AKCDF代表のポールさんに同時通訳してもらいました。歯磨き指導は百戦錬磨であり、国境を越えた明るさを持つ岩井さんのすばらしいプレゼンテーションは子供たちの注意をしっかりと引き付けいて、とてもよい教育の提供となっていました。毎回おみやげに歯ブラシを渡しているのですが、歯科衛生士の方の協力があるなら来年は糸ようじもおみやげにしてみてはどうか、と岩井さんに相談したところ、「フィリピンは糸ようじに達するレベルではなく、とにかくまず歯磨きを指導するレベルですよ」とおっしゃっていました。健診中、「虫歯ゼロですよ」と言われてとても喜ぶお母さんがいらっしゃいましたので、私が初めて参加した2001年のころと比較すると、虫歯に対する意識は少しずつではありますが確実に良い方向へ向かっているとも感じました。

健診と並行し、フィリピンの口腔外科医によるフッ素塗布(注)が無料で提供されていました。例年であれば、その場で麻酔を打っておもいきり抜歯している光景が繰り広げられていたのですが、今年はそのようなことはありませんでした。入園児健診が満員で混乱していたことから、健診を受けずにフッ素塗布のみ受けて帰ってしまった方もいました。入園児健診が例年よりも混雑してしまった理由の一つは、ラサール大学の学生が土曜日に提供しているクラスに参加している地域のお子さんも今年から健診に参加するようになったことです。身長体重測定は、医問研の入江先生のアドバイスで購入した超音波式身長計を使用していたおかげで受付横に場所を変更することができましたが、それでも診察室は非常に混雑した状態となっていました。そのためフッ素塗布だけで帰宅したお子さんが複数いた、と終了後に先生が教えてくださり、来年度改善すべき反省点の一つとなりました。診察の詳しい報告については森先生にお願いいたします。

最後に余談なのですが、私の小学生の娘と、AKCDFの教師の先生の中学生の娘さんとでオセロをして遊んで待っていてもらおうとしたところ、「オセロを知らない」というのでとても驚きました。子供だから知らないのかな?と思って先生たちにもオセロを知っているかたずねてみたところ、全員知らないというのでさらに驚きました。チェスのチャンピオンという理由で大学から奨学金をもらっているラサール大学の学生がいましたので、チェスはメジャーだがオセロはマイナーなようでした。これで19年目になる健診参加ですが、まだまだ新しい発見があったことがとても新鮮だった2019年度健診でした。

神戸大学大学院保健学研究科・NPO法人リハケア神戸 山本

(編集注:歯科衛生的にフッ素使用は有害であることを高橋晄正氏などが明確に指摘し、有益性はいまだ不明です。)