周産期死亡率の増加は2017年末まで継続し福島近隣6県では10人に2人、東京などでは10人に1人が原発事故の犠牲者との、H・シェアプ、森、林論文が放射線専門誌に掲載(NEWS No.527 p08)

周産期死亡率が福島原発事故後に、2012年1月から2014年12月まで増加し続けていることはScherb H, Mori K, Hayashi Kの論文として発表していますが、その後はどうなっているのかを分析した結果が、イギリスの放射線防御の専門雑誌Journal of Radiation Protection 2019; 39: 647-649に「Letter to the Editor」として掲載されました。
この雑誌は、イギリスの放射線防御の分野で世界2番目のThe Society for Radiological Protection などが共同で発行している雑誌です。(早野龍五氏らのいかさま論文も載りましたが、黒川眞一氏の同誌へのLetter to the Editor論文に墓?より倫理的問題・計算誤り・データ隠しが明らかになった。)

内容は、先の2014年12月までのデータを、2017年12月まで継続して分析した結果を出しています。(図1)このことにより、統計的な確実性がさらに強まっています。福島・岩手・宮城・茨城・栃木・群馬の6県では、2012年1月からの増加が約19%増OR=1.188 (1.085,1.301)で、2014年までのOR 1.156 (1.061,1.259)よりさらに3%程度増加し、95%信頼区間も狭くなっています。また、図2の様に、千葉・埼玉・東京では10.6%増OR 1.106(1.035,1.183)で、2014年までの6.8%増OR1.068,1.139)より約4%増加、信頼区間も狭まっています。
福島原発事故の赤ちゃんたちへの障害が6年後も続いており、福島を含む6県で5人に1人が、千葉・埼玉・東京でさえ周産期死亡の10人に1人が福島原発事故によることを示し、その障害が衰えないことを示したものです。この恐るべき結果を、より多くの国民に知らせる義務が我々にはあります。

このLetter to the Editorには、名古屋市立大学の村瀬香氏の重症心臓奇形の手術件数が、福島原発事故後増加したという論文を、周産期死亡率の増加の原因となる病気の具体例を直接示しものとして紹介しています。この論文の最後に、H.Scherb氏が「責任ある科学者と研究機関は日本の周産期死亡と先天奇形をより包括的に長期に被曝と関連付け記録・吟味することを、勧告・希望する」と書いています。

はやし小児科  林

図1,福島・岩手・宮城・茨城・栃木・群馬6県の周産期死亡率の年次変化。事故前より、年間約4%程度の減少をしていた(2011年までの実線)が、2011年3月より急激な増加が短期あり、その後減少したが、2012年1月よりもう一度増加、事故がなければ予想されていた率(点線)より18%も増加したまま2017年末(Medicine論文では2014年末)まで経過している。

図2,東京・埼玉・千葉の3県でも同様に、2011年3月より短期間の増加があり、2012年1月より2017年末まで予想された率より、約10.6%高いまま推移している。