福島原発事故に関して、避難者との連帯を軸に、健康障害解明を(NEWS No.528 p01)

7月27〜28日の「平和と民主主義をめざすZENKO in 東京」が開催されました。
今年は、アメリカで最近急速に勢力を増している、上院議員バーニー・サンダース、下院議員アレクサンドリア・オカシオ=コルテスなどで有名な、アメリカ民主主義的社会主義者DSAからも代表が参加しました。その他、福島、沖縄、韓国、フィリピン、イラクからそれぞれの活動を紹介し、世界的に連帯して平和・平等・民主主義の闘いを議論しました。詳しくはZENKOのホームページをご覧下さい。

さまざまな課題で分科会が開催されましたが、医問研の活動と特に関連する、「低線量被ばくと原発再稼働に反対する」分科会では、避難者支援・裁判闘争・原発再稼働反対、低線量・内部被曝反対に取り組んでいる多くの方々から時間いっぱいに報告されました。

避難者切り捨てを許さないために、国家公務員宿舎にやむなく入居している避難者に対し、これまでの2倍(月15万円を超えることがある)の家賃が請求されている問題で、このことが避難者をどれほど苦しめているかが語られ、その請求を止めることが緊急の課題であることが訴えられました。国連人権理事会が指摘したように、避難者が福島の高度汚染地域に帰還せざるを得ないように強制するような、人権無視がまかり通っているのです。

そもそも、福島をはじめとする広範な人々を苦しめ健康障害を引き起こしているのは、再三の学者などからの提言を無視して、地震や津波対策をサボってきた東電経営陣です。彼らに対する刑事責任を追及する裁判の報告もありました。ごく少数への巨大な利益のために膨大な市民を犠牲にすることを許さないための裁判に勝利しなければなりません。9月8日には「厳正裁判を求める大会」への結集が呼びかけられました。

原発再稼働が多くの反対に押しもどされながらも徐々に進められていることに対する闘いも語られました。原発立地とその周辺の自治体などとの交渉を各地の反原発団体と協力しながら続けていることや、関西電力本社前での抗行動を続けている仲間から熱い思いが語られました。
以上の避難者を支える闘いで今後より一層求められるのは、低線量被ばくによる障害があることを証明すること。福島原発事故から8年以上になって、健康障害が出ていることの証明がより重要になってきていることが、議論の中で明確になってきました。

日本のほとんどの学会や学者がこの問題から目をそらせています。その中で、医問研は、2冊の本と、さまざまなデータの分析をして、学会などに発表してきました。

分科会で、医問研から福島原発による健康障害の科学的分析をまとめた解説資料を配付して紹介しました。内容は、甲状腺がんの岡山大学津田敏秀教授の分析の重要性、甲状腺がん発見率と放射線被ばく量の関係、周産期死亡率の増加の分析、循環器障害やその他のがんでの検討も進めていることなどです。また、村瀬香氏らの著名な医学雑誌アメリカ心臓病学会誌へ重症の先天性心臓疾患の原発事故後の急激な増加、Urologyへの軽症の奇形である停留精巣の増加を証明した論文も紹介しました。他方で、氾濫する非科学的な「○×の増加」に関して、一定の注意を呼びかけました。

今後の取り組みとして、広島・長崎の原爆による「被爆手帳」が被爆者への医療や多くの社会保障、裁判で積極的な役割を果たしていることを考え、被曝手帳制度を要求する運動が提案されました。医問研としてこの運動へどのように関ってゆくかを検討しなければなりません。

はやし小児科 林