第16回避難者子ども相談会・セミナー報告(NEWS No.529 p07)

9月15日(日)にドーンセンターで避難者子ども相談会おおさかの健康相談会およびセミナーが開催されました。午前中の相談会では医問研の医師が2組の相談に対応しました。午後に行われたセミナーの内容を主体に報告します。

まず医問研の高松さんが「健康相談会活動7.5年間を振り返って」と題して報告。小児甲状腺がんや周産期死亡などの放射線障害が明らかになってきているが、日本政府は被ばくとの関連を認めず、2020年東京オリンピックへ突き進んでいる。健康被害をさらに検証していく必要がある。相談会は半年ごと、16回行われ、母子避難が多く、医療機関や社会の無理解がある中で、避難者に健康相談の窓口を設定することができた。甲状腺がんや周産期死亡の増加などの多様な健康障害が明らかになってきている。子どもの成長や避難の長期化の中で、母子含めて内科的な対応の必要性も出てきている。これからも、避難者に寄り添い、健康問題に対応していくことを述べられました。

避難者の森松さんもスピーチ。自主避難というのは避難が本来不要という意図をもった言葉である。国策である原発の事故で被曝を強いられた。原発賠償訴訟では被曝を免れ健康な生活を享受する権利、避難の権利を求めている。避難者だけでなく、福島にとどまった人たちにも避難の権利はおよぶ。国策として国が放射線防護する取り組みがない一方で、住宅補助打ち切りで強制帰還させられる。将来にわたって健康を享受する権利を得るまで活動したい。これからも寄り添ってほしいと述べられました。

医問研の森さんは「放射線と心臓死」と題して報告。死因病名について都道府県により心臓死の診断名がバラバラな中で、6つの心臓疾患死因をひとまとめにすることで比較や検討が可能になるが、死亡数の年次推移をみると、福島県では、2011年には、循環器疾患、心疾患、急性心6疾患が全国と比較して増加していることを報告されました。

医問研の山本さんからは、避難地域で甲状腺がんが増加していることを明らかにした論文が”Medicine”誌に掲載決定されたことを報告されました。

事務局から、健康相談会おおさかの運営について提案がありました。2012年4月に相談会開始。避難者に学ぶ、放射線障害について学ぶというところから始まり、避難者の声をきく集いや「普通の生活」の上映、福島県健康管理調査の分析、ドイツ・ベラルーシ訪問などにも取り組み、2013年からはセミナーを同日開催。活動5周年にはベトナム原発撤回に関しての記念講演ももちました。帰還政策の中で相談会参加者が減少する状況で、ドーンセンターでの相談会は今回をもって終了し、今後はたかまつこどもクリニックで年3回の相談会を行う体制に移行すること、セミナー・講演会は年1回行うことを確認しました。相談会は2020年度は1月19日、5月17日、9月13日の予定です。引き続きみなさんのご協力をどうかよろしくお願いします。

いわくら病院 梅田