原発事故後の健康管理手帳に関して(NEWS No.530 p05)

原発事故後に生じる健康障害に関して、汚染地に残って生活する人も、避難した人も、希望するすべての人に健康診断と医療補償を国と東電(電力会社)の責任で行う制度を作らせる運動が必要です。そのうえで、原爆被爆者援護法の制度を原発事故被害者にも適用し、「被ばく健康手帳」を発行させ活用することは意義あることと考えられます。今回、「被爆者援護法で制定されている被爆者手帳」に関してお教えいただく貴重な機会をえましたので報告します。

本年、7月に阪南中央病院で内科の村田三郎先生に被爆者手帳に関してお話をお聞きしました。この訪問は、同病院小児科の山本征也先生のご仲介で実現したものです。

1.原発事故後の健康管理手帳について

茨木県東海村にあるJCO臨界事故(#.原子力施設の事故により避難、および屋内退避が行われ、一般公衆が被ばくした国内で初めての事例)後に健康管理手帳を発行し一般健康診断などを実施しているが、受診対象者は半径1km以内の居住住民で年間1mSv以上の被ばくが考えられる者であった。年間20mSvではない。福島の20mSv基準は明確な二重基準である。

2.被爆者手帳

原爆投下後に被ばく地域に居た人(直接被爆者、入市被爆者)、被ばく事実が認められる人、胎児であった人は、認定を受けて「被爆者健康手帳」を交付される。「被爆者」に該当するものは次の様な法的援護を受けることが出来る。
1)健康診断(年2回の一般検診、希望すればさらに2回、うち1回はがん検診)
2)一般疾病医療費の支給(医療保険の自己負担分の国庫補助)
3)介護保険の医療系サ-ビスの一割負担分の補填
4)特別埋葬給付金-埋葬料の支給
被ばく手帳を持つ意義、利点は、1)医療を受診しやすくなった。(医療保険の自己負担分の国庫補助から)、 2)定期的な検診受診が可能になった。3)必ず検診の案内が来る:検診受診を忘れない、受診率の向上につながる。4)定期健診日には被爆者手帳を持つ者同士が集まる。被爆者の支援者が集まる。互いに顔を合わせて繋がることが出来る。連帯感が強まる、などがある。

3.原爆症認定被爆者では、認定された疾病に対して、医療費が全額国庫負担

各種手当の支給(厚労省HPからみると)は、例えば、医療特別手当の支給(月額139,330円-H29.4月現在)、 健康管理手当(支給要件該当認定者のみ)月額34,270円-H29.4月現在)、認定患者での支援内容は、医療と共に生活を支える各種手当が支給され、高齢となって体力低下も進み、生活上困難が増す中で役に立つ支援内容である。

4.原子爆弾被爆者認定審査の実態は、認定患者は被爆者手帳取得者のごく少数(1%弱)に制限され、原爆被害の実態を反映していない。

5.被爆者援護を求める運動の経過は、高齢になった被爆者に対して「施策を何もせず、死ぬのを待っているのか?」という怒りが背景に存在し、原爆症認定集団訴訟で勝訴してきた。爆心地からの被爆距離が3kmで認定させ、認定基準を拡大してきた。3.5kmが一般公衆の被ばく線量限界である1mSv/年間に相当するので、年間1mSvの被ばくで認定させてきている。

#.東海村JCO臨界事故は、1999年9月、茨城県那珂郡東海村にある株式会社ジェー・シー・オー(住友金属鉱山の子会社)の核燃料加工施設で発生した原子力事故(臨界事故)である。日本国内で初めて、事故被曝による死亡者を出した。至近距離で中性子線を浴びた作業員3名中、2名が死亡、1名が重症となったほか、667名の被曝者を出した。

高松 勇(たかまつこどもクリニック)