ICRPのパブリックコメントへの意見を出しました(NEWS No.530 p08)

ICRPは変な機関ですが、世界の政府に大きな影響力を持っています。ICRPは原子力産業の利益を守るために、作られ維持されています(詳しくは、中川保雄著「放射線被曝の歴史」明石書店をご覧下さい)。

2019年に新しい勧告案が出ていますが、これにも大変大きな問題があります。運動の力により、この案に対するパブリックコメントが募集されています。

当初、募集期限は、英語の文章は9月20日まででした。その後、日本語と同様に10月25日に伸びています。それを知らず、9月18日に無理をお願いして一晩で翻訳をしていただいた山本八穂氏に感謝いたします。他に、小山潔氏(全交)、山本英彦氏(医問研)など多くのコメントが出ています。(「ICRP」で検索すると簡単に見ることができます。)

以下は、医問研の林としてのコメントです。(原文;英語)

「私たちは、今回改訂の特に以下の部分に反対意見を述べます。」

6.まとめ (Table 6.1)
‘The long-term goal is to reduce exposures to the order of 1mSv per year’
(防護の最適化の長期⽬標は年1mSv 程度のレベルになるように低減することである。)

「目標は年1mSv程度」は間違いであり、明確に「1mSv未満の可能な限り少ない被曝量」とすべきです。特に、妊産婦や子どもは厳密な防御が必要であり、’1mSv/year’被曝することは避けなければならないことを明記すべきです。最新の科学的研究を無視し、過大な放射線を許容する勧告は人類などの遺伝子障害をはじめとした健康への敵対です。

この意見の理由は以下の通りです。
私たちは、福島事故以後に生じた胎児への影響について調査しました。その一つの結果は、福島県を含む周辺6県で周産期死亡率はjump SOR=1.181 (95%CI:1.188 to 1.301) (about 18%)増加し、その増加2017年まで継続していること
を示しました。1)2)しかも、周産期死亡の増加は、東京・埼玉・千葉の地域でもjump SOR =

1.106(95%CI; 1.035 to 1.183)(abou10.6%)増加していました。これは、福島原発事故が胎児に与えた深刻な事態を示しています。
周産期死亡の増加は、日本での重症心奇形の増加3) 、停留精巣の増加4) の報告にも、裏付けられています。

また、チェルノブイリ事故後でも周産期死亡5) 、死産の増加6) 、奇形の増加7),8)などが報告されています。これらによれば、1mSvの被曝によっても胎児が障害を受けることが推定されます。

これらの事実以外に、低線量被曝による人間の障害の報告は近年多数報告されています。その一部を下記に示します。これらの研究を検討すれば今回の勧告は出せないはずです。
チェルノブイリ事故に関した報告9),10),11)。
医療被曝の障害性に関しては、一層多く報告されています。これらの中には極めて大規模な研究報告もあります。12)-20)
その他、核施設に関する報告2。2), 23)
これまでの、低線量被曝による遺伝子への影響を報告した研究の極めて詳しいレビューがあります。24)
また、周知のように広島・長崎の被曝者の生涯研究も、放射線障害の閾値が無いことを証明しています。25)26)
これらの報告のほとんどは今回の案では検討されていないようです。これらの報告を無視したICRPの勧告は間違いです。」
(文献はICRP―Comment―Keiji Hayashi をご覧下さい。)

「参考レベルの」改訂内容の大まかな内容
(FoE Japanのまとめ)

https://foejapan.wordpress.com/2019/08/15/icrp/

はやし小児科  林