新型コロナウイルス感染症COVID-19への科学的政策と医療支援政策の実現を!(NEWS No.536 p01)

東京オリンピックの延期決定後、「感染源不明の患者が急増した」として、4月7日5都府県に、4月16日には全国一律に緊急事態宣言が実施されました。医療も危機的になっています。

日本のVOVID-19検査の少なさが際立っています。オリンピック延期決定の時は、1人の患者を発見するのに24人の検査をしていますが、緊急事態宣言が出た後は、4月10日は同11人に、20日には同8.9人程(東京は3人以下、大阪4人と極端に低い)に減少しています。

このことは、さまざまな検査抑制が続いていることを示しており、「広くテストしないとの日本政府の決定は、COVID-19の有病率を正確に評価することを困難にしている」と駐日アメリカ大使館さえ明言しています。ベトナムは患者数当りで50倍ほど、人口当たり2倍以上(4月11日現)の検査をできるのに、日本がどうしてできないのか不思議です。こうして、緊急事態宣言の効果判定はできないまま、さらに延期が決定されています。

GPSなどスマートフォンの利用に関しては、「制圧」に大成功した韓国などを例に上げ、導入を急ごうとしています。しかし、検査により患者を把握できなければ意味がありません。また、GPS問題は深刻なプライバシー・人権侵害を引き起こすことは必至です。

長引く休校は様々な悪影響を与えています。現在までの疫学調査結果では、子どもからの感染拡大の報告は世界的にもほぼありません。多くは家庭内感染や狭い環境で3密状態で過ごすことから感染しています。学童保育では児童の多くは、通常の学級以上に狭い空間で生活せざるを得ません。政府は早すぎで長い休校の上に、9月新学期方針を打ち出し現場をよけいに混乱させています。

COVID-19「治療薬」として多数の「薬」が治験されています。その中で、「アビガン」は安倍首相が音頭をとり進めており、RCTも開始されています。これが、日本の薬剤認可システムを破壊することの危険性もあります。

病院は医療崩壊に直面しています。日本の病院は、容赦ない合理化で、ぎりぎりまで患者を入院させるよう追い込まれたうえ、10年間で2万1千床が減らされています。さらに、昨年、全公的・公立病院の約3分1,424病院の統廃合が発表されました。なんと中国でCOVID-19の流行が明らかになり、日本に最初の中国からの患者が確認された2日後の1月17日に統廃合の目標を440病院に増やしています。

人口当たりのICU病床はドイツの4分の1,イタリアの6割弱です。医師数はG7最下位、医学部卒業生はOECD35カ国中下から2番目です。

感染症で重要な役割を果たす公衆衛生行政も保健所・保健センター・衛生研究所などが予算も大合理化されてきました。それを最も強硬に実施したのは維新の大阪府・市政です。元大阪府知事・大阪市長が「反省」せざるを得ないほどです。

しかも、今回も医療機関への資金投入は極めて少ないようです。この危機を乗り切るためには、医療専門職の増員を図り、専門職を補助する人員を今すぐ増員すること、感染予防などの医療材料や医療機器の購入など、COVID-19を受け入れるための十分な公的資金の投入が必要です。しかし、これには一時的な資金だけでなく、医療機関の合理化の停止と拡充の補償でその実現を確実なものにされなければなりません。

はやし小児科 林