「緊急事態宣言」前から、新型コロナの「感染」者は減少していた(NEWS No.537 p01)

緊急事態宣言の解除が進んでいます。まるで緊急事態宣言のおかげで新型コロナウイルスの感染が減ったかのように報道されています。

新型コロナの患者数は、PCRが陽性に出た人数として日々発表されています。PCR陽性者増加数の推移と緊急事態宣言を出した時期だけを見ますと(棒グラフ)、4月7日の7都道府県の同宣言の5日後にピークになり、その後は減少しはじめ、12日の同全国の後も減少が続いています。あたかも同宣言が患者からの感染機会を少なくし、患者の増加を抑えたかのようです。

しかし、緊急事態宣言と新型コロナの感染人数の減少は関連がないことが、5月1日と14日に発表された、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」に出されていました。

ここで、感染した日とPCR陽性となった日の関連をみますと以下のようになります。

患者と接触して感染しますと、約5日間の「潜伏期」の後に「症状」がでます。保健所などに相談しますと2−4日間ほど経過を見るように言われます。その後、医療機関にかかると、多くの場合経過を見ながら検査をすることになります。これに数日かかるようです。その後PCR検査をしますと結果は1−3日ほど後にでます。結果が陽性ならPCR陽性者として報告され、自治体・厚労省から発表されます。

ところで、緊急事態宣言の外出、商店や飲食施設の営業制限などの目的は「感染」を抑制することにあります。ですから、緊急事態宣言の効果がいつ現れたのかは、PCR陽性になった日ではなく、「感染」を受けた日です。

5月1日と14日の専門家会議発表資料には、「症状」の推移から推定された「感染日」の推移の棒グラフが含まれており、「感染」した日の人数の推移がわかります。(図下棒グラフ:5/14)

これによれば、患者から感染した日のピークは、3月27日ごろで、以後急速に減少しています。そのピークは7都道府県の宣言日の11日前であり、同全国の20日前に当たります。

7都道府県の宣言時には新たな感染者は、すでにピーク日の2分の1程度に、同全国宣言日にはすでにピーク時の4分の1程度に低下していたのです

日本の新型コロナウイル感染症患者のデータは、検査数が少ないことの問題があります。しかし、少なくとも感染した日の人数の公式データからすれば、緊急事態宣言がこの間の「感染機会」を減らして、患者数を減少されたのではないことが明らかになりました。

同宣言は、社会に莫大な否定的影響を与えましたが、不必要な政策だったのです。

はやし小児科  林