新型コロナウイルス対策にGPSなどの導入は危険!(NEWS No.537 p08)

河野太郎防衛相は4月13日、講演で、防衛省・自衛隊内での新型コロナウイルス感染防止対策として、感染者との濃厚接触の有無を追跡できるスマホアプリの導入を検討していることを明らかにした」との報道がありました。https://trafficnews.jp/post/95510(5/26現在削除)

河野大臣は、「GPS」を使わないのでプライバシーを侵害しないと述べていますが、「アプリは、スマホのブルートゥース(無線通信)機能により、利用者の移動の履歴をチェックして、感染者が判明した場合、一定距離で一定の時間を共にした人に通知が届く仕組み」です。個人生活も含めて感染者とその周辺の人達の行動を掴めなくては意味をなさないことなので、プライバシーを侵害しないというのは信頼できません。米IT大手アップルやグーグルも同様の技術を開発しており、欧州、アジア諸国でも導入が検討されているようです。

河野大臣とは別に、児玉龍彦東大教授が盛んに、感染症対策に、「古い人権」の考え方を変え、GPS導入をと主張しています。 ユーチューブで放送されている「デモクラシータイムズ」という、民主的な方々に人気のある番組だそうですが、そこで私が見たものだけでも3回にわたり、GPSを利用することがとても重要かのように述べています。5月になって放映された時にはアビガンの使用も当たり前のように言っています。また、日経新聞に掲載されたり、https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00002/041701182/、海外記者へのプレゼンテーションでもGPS導入を主張しています。https://togetter.com/li/1519556

彼のGPS導入大賛成の論理は、「日本が滅びる」などとセンセーショナルなことを言って、「一律規制から精密規制:GPS追跡」「ビッグデータでなくプレシジョン・メディスン」と称して、「本格的なGPSトレーシングの時限立法を議論する」としており、大変危険です。ご存じのように、彼は福島原発事故のあと、「人がよごしたものをひとがきれいにできないわけがない」(児玉龍彦 (著)「内部被曝の真実 」幻冬舎新書)などと「除染」を巧みに主張し、大手ゼネコンに巨大な利益を、現場労働者に過酷な労働をもたらした経歴があります。

しかし、GPSはどれほど役に立っているかは検証されているのでしょうか?とりあえず、PubMedに登録されている論文を「COVID-19 and Global Positioning System」で検索しました。ヒットしたのはたった9論文でした。うち、中国(Int J Health Geogr 2020,19:8)、韓国から(Osong Public Health Res Perspect 2020,11(1):60-63)、接触者情報が正確になったとの報告があります。台湾からの論文のみがどれだけ効果があったかを数字で示しています。ダイヤモンドプリンセス号乗客が、日本に来る前に、台湾で観光しました。その客と接触した人の携帯を使った「効果」の調査で、携帯を使った人たちのうち新型コロナの検査をした(わずか)67人のコロナPCR検査が全員陰性だったこと、携帯を使った人たちは一般住民より呼吸器症状が7%・肺炎が8.5%少なかったので、役立ったとしています。しかし、携帯を使った人達は、一般住民より遙かに若い人達であり、年齢補正をしたとはいえ正しい罹患率の比較とはほど遠いと思われます。これらが、COVID -19の感染抑制に役に立った証明になるとは思えません。このように、まともな疫学研究はされていないように思われますが、ネットではうんざりするほど記事がでています。

ドイツ、ナイジェリア、スウェーデンからの報告は、研究の紹介程度です。

韓国や台湾の論文では、総合的な対策の1つとして、患者の行動を追跡(発症前後)する際に、GPS、クレジット・カード、CCTV(監視カメラ) や医療機関での情報(韓国)や旅行日程(台湾)などが使われています。韓国ではGPSとCCTVは警察庁が担当です。これらのデータは全て権力が握り、患者や市民にはどうなったか不明となる可能性大です。携帯のデータが全て盗聴されていることなどを暴露してアメリカから亡命しているスノーデン氏らの専門家は、それらのデータを権力が手放すはずはないと、指摘しています。 https://techable.jp/archives/120128

検査もまともにしない国に対して、民主主義的諸権利と引き替えにしてGPSなどプライバシーを侵害する手段を要望するのは、大変危ないものと考えられます。

はやし小児科 林