赤ちゃんが生まれ、成長発育をみながら楽しい子育てが始まろうとする時、お母さん方に突きつけられるのが、赤ちゃんへの予防接種の選択です。
定期接種だけでも13種類で、さらに増えようとしています。一つひとつの意味を考える余裕もなく開始され、その悩みについてよく相談を受けます。すべて受ける/すべて受けない、との主張は、どちらも思考を停止する同じ立場であり、よく調べて選択することをお勧めしています。
そういう方への心強い味方となる本で、「予防接種反対」の本ではありません。予防接種を「受ける側」に立ち、子どもの健康を守る子育ての科学的知識を提供しています。
受ける前に読む「予防接種と子供の健康」のパンフには大事なことが書かれていますが、「勧める側」の立場に偏っており、その読み方を丁寧に説明しています。このパンフでは、自然に感染して獲得する免疫力(抗体)は非常にしっかりして、二度とかからないものであること(自然感染)、また感染しても病気の症状が出ないまま(不顕性)抗体を獲得して病気にならないこと(不顕性感染)、の大事な内容が抜け落ちている点についても触れています。
ワクチンを選ぶ判断としてメリット/デメリットを天秤にかける5つの判断基準が示されています。
- どのくらい怖い病気?:毎年どのくらいの人がかかるか?死ぬ確率は?予後は?
- ワクチンの効果は?:効かない人の割合は?効果の持続は?
- ワクチン以外の対策の有無:予防法やかかってからの治療法は?
- 副作用のリスクは?:重い副作用の有無とその頻度は?
- 重い副作用への救済はあるか?
定期接種の中の日本脳炎予防接種は、2018年度の患者発生はゼロにもかかわらず、その年に接種された子どもに死亡例がみられ、重篤な脳症やけいれんの副作用が多数みられており、天秤にもかけられない危険なものもあります。
対象となる個々のワクチンについて、この5つの判断基準をもとに選択が可能となります。
同時に現行のすべてのワクチンについての評価が載っており参考になります。
しっかり勉強して自分なりに自信をもって選択しても、かかりつけ医や行政の保健師、保育所などで、意に反する「限りなく強制に近い勧奨」に出会います。
その時に、挫折したりケンカにならないための心準備として、「同調圧力対策マニュアル」があり、この本の勘どころといえます。
異なる意見の相手の立場を、まず理解してあげること。受けたくない理由を焦らず、冷静に解りやすく伝える。それでも頑なな人には、最後は法律論を準備しておく。
これらをしっかり身につけることで不愉快な思いを残さずに、親としての選択権を守るための心遣いには救われる思いがします。
また、副作用にあった時の、救済のための手続きも解りやすく解説されています。
子どものことを第一に思い、責任をもって子育てを行っていこうとするご家族には強力な助っ人になり、是非お薦めいたします。
入江診療所 入江
『受ける/受けない 予防接種』(増補改訂版)
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