コロナ下の感染症変容の1考察(NEWS No.544 p08)

前号でお知らせしたように、新型コロナ(COVID-19)感染拡大とともに、例年みられる感染症が突発性発疹を除いて激減し、国立感染症研究所の報告で、次のようにまとめられている。

突発性発疹は、小児のほとんどが2~3歳までに抗体陽性となり、不顕性感染が20~40%という血清疫学的特徴から、季節で変動する他感染症を標準化する基準疾患とされている。

ところが9週目の一斉休校要請から、23週目の緊急事態宣言解除の間の報告数は、例年に比べ減少している。解除後は戻り例年平均を上回る。ここから、この間の受診抑制が読み取れる。

髄膜炎は緊急を要する重症疾患であり、受診を抑制できるものではない。5歳未満の報告が多く、原因菌はインフルエンザ菌、肺炎球菌などで、季節による変動のみられないもので、コロナ禍においても同様で、受診抑制の傾向はみられない。

一方、主にウイルス感染による無菌性髄膜炎は、夏季の流行に減少がみられている。これは、手足口病、ヘルパンギーナなどエンテロルスウイルスによる夏風邪の激減、またマイコプラズマ感染症など他の感染症の減少の影響で、無菌性髄膜炎の発症そのものが減少したと考えられる。病原体自体が減少しているのか、コロナ禍でのマスク、手洗い、三密を避けるなどの生活様式の変化による感染経路の影響なのか解明が必要である。

また結核対策においても変化がみられている。昨年までの3年間に比べ、新登録患者・塗抹陽性患者ともに大幅な減少がみられている。

これらは保健所に人的・財政的補償のないまま、コロナ対策を押し付け、そのしわ寄せで本来業務である結核対策が手薄になり、患者把握数が落ち込み、結核蔓延の危険性を示す事態と考えられる。

このように感染症流行の変化の様相は、受診抑制、生活様式の変化、公衆衛生対策の手抜きなど様々である。

入江診療所 入江