人権侵害のコロナ関連法改悪は許してはならない! 医療者として反対の声を広範に上げよう!(NEWS No.545 p01)

政府が1月22日に閣議決定した新型コロナウイルス対策のための関連法改正案(新型コロナ特措法、感染症法改正案)は、患者・感染者への入院強制や検査義務化等に刑事罰もしくは罰則を設ける改悪です。

今回の改悪の大きな柱は刑事罰(懲役・罰金)です。具体的には、

  1. 入院勧告を拒否したり、入院先から逃げ出した患者・感染者に1年以下の懲役か100万円以下の罰金の刑事罰、
  2. 積極的疫学調査の拒否や虚偽答弁に50万円以下の罰金。さらに、
  3. 休業・時短要請に応じない事業者に対し知事が命令することを認め、違反者には過料を科す。緊急事態宣言下で50万円、「予防的措置」下で30万円。
  4. 医療機関への制裁的公表、すなわち、厚労省や知事は、医療関係者や民間検査機関に協力を求める勧告ができ、従わない場合は名前を公表できる。また、
  5. 緊急事態宣言前でも生活や経済に大きな影響を及ぼすおそれがあれば、私権制限ができる「予防的措置」=「まん延防止等重点措置」の実施が可能となる。要件は内閣が政令で決め、国会への報告義務がない等。

かつて感染症対策として結核・ハンセン病で患者・感染者の強制収容が合法的になされ、蔓延防止の名目のもと、科学的根拠が乏しいにもかかわらず、著しい人権侵害が行われてきた歴史があり、このような患者を強制的に抑え込むことは否定されてきた経緯があります。この反省の上にたって現在の感染症対策は考えられてきました。

感染症の制御は国民の理解と協力によって行われるものです。医療施設や宿泊施設が十分に確保されなければなりません。また、入院勧告や宿泊療養、自宅療養の要請措置を行う際には、措置に伴って発生する社会的不利益に対して、本人の就労機会の保障、所得保障や医療介護サービス、その家族への育児介護サービスの無償提供などの十分な補償が行われなければなりません。その責任は国と地方自治体にあります。その政策を十分に行わず、新型コロナ感染症のまん延を生じさせた国の責任こそが第一義的には問われねばなりません。これらの対策を十分に行わないで感染者個人に責任を負わせることは倫理的にも到底受け入れられないことです。

現行の感染症法における諸施策は、「新感染症その他の感染症に迅速かつ適確に対応することができるよう、感染症の患者等が置かれている状況を深く認識し、これらの者の⼈権を尊重しつつ、総合的かつ計画的に推進される」ことを基本理念(第2条)としています。この基本理念は、「(前略)我が国においては、過去にハンセン病、後天性免疫不全症候群等の感染症の患者等に対するいわれのない差別や偏見が存在したという事実を重く受け止め、これを教訓として今後に生かすことが必要である。このような感染症をめぐる状況の変化や感染症の患者等が置かれてきた状況を踏まえ、感染症の患者等の人権を尊重しつつ、これらの者に対する良質かつ適切な医療の提供を確保し、感染症に迅速かつ適確に対応することが求められている(同法・前文)」との認識に基づいています。

このような現行法をも否定する国の不当な権限の強化、人権侵害は許されるものではありません。

ハンセン病違憲国賠訴訟全国原告協議会は、22日「刑事罰をもって隔離を進めることは、患者への偏見・差別を助長する。強く反対する」と訴えています。ハンセン病家族訴訟の弁護団も「患者の人権を不当に侵害し憲法違反」と反対声明を出しています。

学術界からも反対の動きがあります。日本医学会連合が、1月14日「感染症法等の改正に関する緊急声明」を出し、「政府で現在検討されている感染症法等の改正において、患者・感染者への入院強制や検査義務化等に刑事罰もしくは罰則を設ける方針が示されていることに深く憂慮」すると表明。日本公衆衛生学会も、同日に「感染症法改正議論に関する声明」を出し、「あらゆる感染症において国民の参加協力のもとに感染を適切に制御する観点から、患者・感染者の入院強制や検査・情報提供の強要に刑事罰・罰則を伴わせることは不適切である」としています。広範な国民から反対の声が上がってきています。人権侵害のコロナ関連法改悪は許してはなりません。医療者として反対の声を広範に上げていきましょう。

さらに、今回のような「感染症の恐怖、不安に乗じた国民への管理・統制の強化」には、人々を分断していく危険性を内包しており注意が必要です。疾病への恐怖や不安は、「どこの人が疾病を持ってくる。どこの人はここに来るな」という相手への憎悪感や排斥の感情を感染対策の名を借りて増強させます。身近なところでは、マスク着用や休業しない店への自粛警察まがいのヘイト行為、欧米でのアジア人への排斥などが生じていました。夜の街の取り締まりでは、警察は風俗営業法の法律の範囲を超えた取締りを行っており、それを国も東京都も求めてきました。人々の不安が強くなり、大きな力への漠然とした期待感や社会的心理を背景に、時の権力者が主体的に管理統制を強化しようとする流れの呼び水になる危険性が大いにあります。感染症の不安に対する回答は、科学的根拠に基づく感染症対策です。十分な対策を求めていきましょう。

罰金:強制的に金銭を徴収する「刑罰」、検察庁保管「前科調書」に記載され「前科」の対象。
過料:行政罰で刑罰ではなく「前科」とならない。
日本医学会連合:日本の医学界を代表する学術的な全国組織連合体、計129学会・会員の総数100万人

高松 勇(たかまつこどもクリニック)