英国変異株─子どもは感染リスクが高いのか? 緊急事態宣言下─大阪市小中学校一斉オンライン授業─実質上の休校措置は、コロナ感染拡大防止の科学的根拠はない(NEWS No.548 p07)

4/25から東京都、大阪府、兵庫県、京都府では緊急事態宣言が実施されています。大阪市内では、小中学校が午前中授業の一部が休みになり自宅でのオンライン授業が実施されています。この背景には、一部報道で「変異型の子どもへの感染割合は従来型を上回り、クラスター(感染者集団)発生のリスクが高まっている」とされ、「感染から子どもたちを守るために部活動の制限や一斉休校の拡大を求める」声が上がっている事情があります。

変異株の子どもへの影響に関しては、日本小児科学会 予防接種・感染対策委員会が「子どもと新型コロナウイルスの変異株の感染について」(本年3月23日)の声明の中で明確に伝えています。

国内では、子どもが集まる施設でこの変異株によるクラスターの報告がされ、多くの子どもが感染しています。 ただ、変異株が既に広がっている英国ロンドンでは、変異株による感染は特に子どもに多 いということはなく、成人と子どもの感染者の割合は変異株の出現した前後で大きく変わっていません。

また一方で、変異株が子どもに感染した場合、既存株と異なる経過を示すことはないと報告されています。子どもでは感染者の多くが無症状から軽症で、既存株でも変異株でもその違いはありません。頻度の高い症状としては、発熱、せき、鼻水、下痢、頭痛などがあげられます。変異株が子どもにより重い症状を引き起こす可能性を示す証拠はこれまでに得られていません。

この様に主張される疫学的データを確認したいと考えます。以下の図はいずれも英国(昨年から本年)のコロナ感染者の統計デ-タです。下図は英国イングランドで14日間ごとの年齢階級別のコロナ感染者の報告率を月ごとに表示したグラフです。

英国株の流行と子どもへの影響力に関して解説している朝日新聞記事(森内浩幸・長崎大小児科教授)が参考になります。このグラフは「日本より前に変異ウイルス株の流行が広がり、大きな感染の波ができたイギリスでは、感染が最初に広がったのは15~24歳で、24~49歳と続き、15歳未満の拡大が見られたのは一番最後だったという欧州疾病予防管理センター(ECDC)の論文があります。

それによると、15歳未満は、感染の拡大がみられた時期がほかの年齢層に比べて遅かったことに加え、ピークの山も一番低かった。このことから、変異ウイルス株の場合でも、子どもは流行の中心ではなく、子どもから大きく広がった事実はないことがわかります。同様に、子どもが重症化しにくいということも、変わっていません。」と解説されています。

英国変異株でも「子どもが感染を広げやすい」ということではなく、すべての年齢において感染力が強いので、ウイルスが広がりやすいということにすぎないのが実態です。感染防止上科学的根拠がない学校一斉休校に反対しましょう。

参考文献:
1)子どもと新型コロナウイルスの変異株の感染について 20210323-日児 予防・感染症委員会
20210323_SARS-CoV-2 Mutants_Statement.pdf (jpeds.or.jp)
2)Rapid increase of a SARS-CoV-2 variant with multiple spike protein mutations observed in the United Kingdom 20 December 2020
3)Greater London Authority (GLA) Coronavirus (COVID-19) Cases and Vaccinations
4)私は一斉休校に反対する 小児科医が語る変異株の事実 朝日新聞デジタル 2021年4月21日
5)新学期、変異型に警戒 10代以下の感染リスク高く 日経新聞 2021年4月7日

高松 勇(たかまつこどもクリニック)