コロナワクチンの市販後調査論文の重大な疑問点(NEWS No.549 p04)

コロナワクチン、特にファイザー製の臨床試験(RCT)については、本誌No.546 p.02の例会報告でまとめています。

今回は、市販後の研究について、重大な疑問点がありましたので報告します。

問題の一つは、効果の出現時期が異常に早いことです。これまでのワクチンや免疫の理論的な面から考えて、ワクチンの効果が出始めるまで2週間程度はかかることが考えられます。なお、以下のデータは、ファイザー製コロナワクチン1回接種後の「効果」のデータです。

RCTはいつから出現?

わかり易いように、まずRCTでの接種後の期間と効果の程度を示す下図を見て下さい(図1)。

図1

縦軸はコロナ感染者の発生率、横軸はワクチン接種後の日数です。上の線はワクチンなし群、下がワクチン群です。コロナ感染?発生率が接種後12日からワクチン群で少なくなり始めています。効果は、12日ごろから始まっているといえます。Safety and Efficacy of the BNT162b2 mRNA Covid-19 Vaccine | NEJM

スコットランドでの入院を減らすとの市販後調査論文の「効果」発現時期が早すぎる

次に、スコットランドでコロナによる入院率を抑制したとのコホルト研究論文を見て行きます。皆さんご存知のランセットという大変権威ありますが、最近は製薬会社と大変仲が良い雑誌です。https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(21)00677-2/fulltext

右段表と図は接種後からの期間別の効果を%で現しています。この経過をみて不思議に思いませんか?この研究では、接種後0-6日で実に86%の効果が出ています。次の7-13日では、53%になっています。

図2

図2のように、その後に「効果」は、14-20日後、21-27日後と徐々に増加し、接種後0-6日ほどの大きな「効果」は接種後28日以後になって初めて出現しています。これは、RCTの経過(図1)とはずいぶん違うものです。

さらに、RCTのアウトカムはコロナ症状を有する患者です。コロナ感染者の出現から入院までは、何日間かかかると考えられますので入院を減少させる効果の発現はより遅くなるはずです。そのため、接種後7-13日にもワクチン効果がでているのさえ疑問です。

したがって、この時点での「効果の差」は、むしろ接種対象者の違い、すなわちワクチン接種者はコロナにかかりにくいか、かかっても入院するほど重症になりにくい人たちであることが考えられます(健康効果)。とすれば、0-14日までの「効果」の率で、その後の「効果」を補正しなくてはいけませんが、それは全くなされていません。それもそのはず、その補正をすると、接種後0-14日までの入院の減少が約70%ですから、その後の効果は10-20%程度になってしまいます。

この論文著者達は、ワクチン接種者の方がもともとコロナでの入院はしにくい人たちだったことを認めたくないので、この現象の説明を健康効果以外の理由で説明しようとしています。しかし、同じランセットの「コメント」はこの問題を重視して著者の理屈を紹介しつつ「ただし、初期の(ワクチン群と非ワクチン群との:林)違いは、一時的でないバイアスの原因を反映している可能性があります。」と批判しています。「一時的でないバイアス」とは「健康バイアス」などを想定していると思われます。

https://www.thelancet.com/action/showPdf?pii=S0140-6736%2821%2900765-0

その他の、市販後研究の効果発現時期は?

同じランセット誌に、イングランドでの医療従事者対象の市販後の調査研究が発表されています。この論文の目的はRCTでは証明できなかった、無症状者にも効果があることを証明し、流行を抑えることができるとの間接的証拠を示すことのようです。https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(21)00790-X/fulltext

図3

図3の縦軸は、ワクチン群でのコロナ感染者が生じた率を、ワクチンなし群のそれで割ったものです。ワクチンがコロナ感染者を何倍にしたかの比率で、数字が小さい方が良く効いたことを示します。横軸は接種後の日数です。

この論文でも、やはり0-3日に、コロナ感染者を0.6程度に減らしています。ところが次の4-6日になると効果が消え、7-9日ごろ少し効果が出はじめ、10-13日には有意に効果がでています。これでも、RCTと比べると早く効果が出すぎです。

イスラエルからの報告はまるで違う

次に、国民の大部分(全体的には実は6割強だが、高齢者は8割以上)に接種し流行を食い止めた、とマスコミで良く登場する国のデータです。この国のワクチンはファイザー製です。

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2101765

図4は、コロナ感染者率の推移です。右に行くと上になる線はワクチンなしの群で、下の線がワクチン群です。RCTとほぼ同様か少し遅れて14日ごろより効果が出始めています。(40日目でも感染阻止効果は50%程度です。)イギリスの例(図3)と大変違います。

図4

図5

図5はコロナでの入院患者率の推移です。なぜかこちらは接種後7日ほどから少し効果が出始めていますがはっきりするのは14日以後です。この図と、先のスコットランドの経過とは、まるきり違います。イスラエルのワクチンはファイザー社製品ですから、ファイザーの治験RCTの結果とまるきり同じなのは当然でしょうか、それではスコットランド・イギリスからの報告との違いはなぜ生じたのかが問題になります。

以上より、これらの市販後調査の示す「効果」には非常におかしいことが生じています。そのため、これらの研究の信頼性が疑われます。

コロナ感染以外のワクチンの有害作用などのデータが明示されていない

ワクチン接種後短期間での「効果」を示すデータの矛盾の他に、これ以上に重要かもしれない問題があります。

それは、これらの論文は「コロナに感染した人」「コロナの感染で入院した人」「コロナに感染して死亡した人」たちのみしか検討していないことです。

実社会でワクチンが本当に効果あったのかどうかは、有害作用も含めて検討しなければなりません。

特に、入院や死亡では、ワクチンの害作用などコロナ感染以外の原因による入院や死亡はどうだったのかを明示しないと、ワクチン接種の本当の「効果」を評価できません。しかし、スコットランド・イギリス・イスラエルでの調査論文は、その点を無視しているのであり、この点からも信頼できません。

やはり、全てのデータの公開が必要です。

はやし小児科 林敬次