小手先の「自宅療養強制」「酸素ステーション」「カクテル療法」でなく、医療機関拡充のための思い切った特別予算を!(NEWS No.552 p01)

激増する新型コロナ感染と自宅療養者

東京都の自宅療養者は2万2千人を超えています(8/18)。大阪府も、1万2千人を超えました(8/20)。8月2日入院制限が唐突に決められたために従来も多かった自宅療養患者が一層増加したものと考えられます。正月前後や4-5月の、医療崩壊直前の状況を何ら反省せず、緊急的な医療の拡充までさぼってきた結果です。オリンピック・パラオリンピックの開催強行などに影響され、感染が急速に増えたことも考えられます。

自宅療養の強制

ワクチン接種率が増加すればイギリスやイスラエルのように患者増を抑えられると思って実施したとも思えますが、この「自宅療養」政策は、最大の感染源である家族内感染を激増させると共に、ワクチン一辺倒の政策が破たんしたことも示しました。高齢者への接種からより若い人への接種拡大がワクチン入手困難のためにストップしたためとの見方もありますが、たとえワクチンがより多くの人に接種できたとしても、流行は抑えられないことが、この間のイギリス・イスラエルその他国々で明確になってきました。日本でも同様です。確かに高齢者の発症は少なくなりましたが、それでも多数がワクチン後に感染しています。

酸素ステーション

そこで、次に出された政策は、「医療機関拡大への大幅予算追加」ではなく、「菅首相が8月13日、打ち出したコロナ対策の一手」が「酸素ステーション」です。これは、いわば医療崩壊をそのままにしておいて、自宅療養を基本に、酸素が必要になれば同ステーションに行って、そこで酸素を吸って元気になり、また自宅療養になるというイメージです。しかし、同様のステーションを始めた神奈川県の責任者は「酸素ステーションに頼る必要のない医療状態に早急にもっていくことが今求められています。」と語っています。

カクテル療法

八方ふさがりで、出てきたのが、「カクテル療法」です。「『デルタ株』による急激な感染拡大の中にあって、軽症や中等症の方が重症化するのを70%防ぐと言われている。これからも極めて対策として大事だ」と、政策の柱にしました。オリ・パラ強行での感染拡大には知らん顔ですが、製薬会社の利益には敏感です。

カクテル療法の疑問

このカクテル療法が、米薬剤の規制当局FDAや欧州EMAで「緊急承認」されましたが、日本は世界に先駆けて7月19日に「特例承認」(商品名ロナプリール)しました。この経過でおかしなことがあります。 ①FDAやEMAでの認可は軽症者対象であり、入院患者への適応でありませんでした。この緊急承認の根拠は、「入院」と「死亡」を合わせた大変あいまいな「入院または死亡」を7割減らしたというものでした。②入院患者を対象としたRCTでは主要評価項目の死亡率を30%から24%に2割減らしただけでした。③日本では、対象は入院患者とされているのに、添付文章には外来患者対象の「入院ないし死亡」を7割減らしたとのデータが載せられており、大変矛盾しています。菅首相が入院人数を減らすためにこの「カクテル療法」にすがりついたので、8月25日にあわてて外来でも使用できるようにするとしました。薬剤認可の極めつけの汚点です。④FDAと違い、EMAは、感染やワクチン接種者後などの抗体保有者には(効果がないので)不適とし、先のRCTでも抗体保有者には全く効果なしです。ところが、ロシュの「7割効いた」とする発表にも、日本の添付文章にもこのことは全く触れていません。より深い検討は必要ですが、この「カクテル」もタミフルと同様、大変おかしな薬である可能性大であり、医療ひっ迫改善にたいした成果を上げられないと思われます。

もはや、小手先の「対策」ではその場しのぎもできません。この際、巨大規模予算を使って、医療機関を公的医療機関を中心に拡充することを軸に、当面の医療機関への負荷を少なくすることが求められています。