ファイザーワクチン先行国イスラエルの教訓(NEWS No.552 p02)

イスラエルではファイザーの肝いりで2020年12月20日から医療関係者、65歳以上、長期施設入居者を皮切りにファイザー/ビオンテックワクチン(以下F/B)接種が始まった。週ごとに接種対象を広げ、最終16歳以上のすべての国民対象にワクチンがすすめられた。その結果、世界に先駆けて2021年2月中旬には1回以上の接種者が全国民の40%を超え、3月には集団免疫の流行阻止の目安である60%を超えた。

図1に示すようにこれに呼応するかのように新規患者は減少に転じた。4月3日までのイスラエル保健省の詳細調査では2回接種者は16歳以上の人口6538911名中4714932名(72.1%)、65歳以上では1127965名中1015620(90.0%)に達した。

一方、検査確定新規COVID-19感染者は2021年1月20日の10213名をピークに減少しはじめ4月3日には(Our data in worldでは1月11日、996人/100万、6月9日には1.2名にまで減少)。

なお4月3日までの罹患数とロックダウンと解除についての経過を(図2)に示す。

ロックダウンによる感染者の減少よりワクチンによる減少の効果が上回ると保健省は評価した。

その後、Our World in dataによると、感染者は1月ピーク時の996/100万人から6月9日の1.2/100万人にまで減少し、これらを背景に6月1日ロックダウンの解除、マスク着用などの種々規制解除を段階的に行うと宣言した。

解除直後から感染が増加

ところが、規制緩和宣言直後からコロナは増加に転じ、(図3)に示すように8月20日現在800/100万となお増加している。

この増加傾向は世界的ではあるが、イスラエルは突出している。参考までに(図4)にUSA,UK,日本の現状を示す。接種率はイスラエル、UKが70%、USA60%、日本は50%である。

ついで新規患者の増加のなかで、ワクチン接種の有効率をみる。増加している新規患者の約半数はワクチン2回接種者といわれているが、接種率の違いを考慮して有効率を見る必要がある。

(表1)は6月以降8月14日現在の年齢群別のワクチン未接種者の罹患率とワクチン接種者の罹患率をグラフ化したものであり、(図5)はそれ に加え最終列に実数をあてはめ全体のワクチン有効率を見たものである。これで見ると、ワクチン有効率は37%まで低下していることになる。

もともと95%近くの有効率を誇っていたものが、このように低下したことの原因について、イスラエル保健省は、デルタ変異の影響、ワクチン効果が薄れてきたこと、低年齢層を中心とした未接種者が多いことなどを理由としてあげ、3回目接種、低年齢層の接種を方針化している。が、(表5)に示すように、最も早く接種を終えた70歳以上の高齢者の有効性は比較的保たれているようにみえること、低年齢層を中心とした未接種者での流行というなら有効率はむしろ上昇するはずであることなど論理矛盾がある。ワクチン政策一辺倒でなく、むしろロックダウンの解除やマスクや感染拡大防止の基本方策の解除などを問題視すべきではないだろうか。重症化、死亡については次号に掲載します。