医問研2月例会報告1─ブースター接種のリアルワールドでの効果も疑問(NEWS No.558 p02)

2月例会は入江氏からコロナワクチンの10-20代での厚労省データからの副作用の実態報告、松本氏からエキソソームがコロナに影響を及ぼす可能性についての文献的推論が紹介された。両氏からの記事を参照。

私からは、医問研ニュース12月号、1月号でイスラエルでのブースター効果の評価と文献検討を行った後、今回は世界中のリアルワールドでのコロナワクチンのオミクロン変異株に対するブースター効果について、発症阻止効果、重症化阻止効果について検討した。

1. イスラエルのブースター接種について

イスラエルは8月1日にブースター接種開始、30%が接種した9月16日ころから実効再生産率は1.0を切り、減少に転じたかにみえたが40%が接種した10月20日には再び上昇。1月31日までは実効再生産率は1.0を超えた(1以下だと増加率が減る。増加が0になるわけではない)。

この間12月末前後にオミクロン変異の流行に置き換わったが、3回目接種後の罹患増加は10月20日ころからであり、オミクロン流行前に3回目接種の流行阻止効果は減じてきた。つまりイスラエルの結果からは少なくとも2か月たつと3回目のブースター接種では流行を防げない。4回目接種は12月末に始まったが1月25日には過去最高の新規罹患者のピーク1.1万人/100万名となった。その後罹患数は減ったが、4回目のワクチン効果についてはやはりもうしばらくの観察が必要である。

2. オミクロン変異へのブースター

日本では3回目接種によるオミクロン変異への流行阻止効果が叫ばれ、小児への接種にまで範囲が拡大されようとしている。これについては、日本、韓国、のブースター効果を比べて見れば一目瞭然だろう。

上の図は日本と韓国のブースター接種率、新規コロナ罹患者/100万を比較したものである。日本では接種率は14%に時点の2月9日で新規罹患者数は750/100万人で高止まりしているように見える。一方韓国では接種率が60%を超えた2月23日時点でも新規患者は2350人を超え、指数関数的増加に歯止めがかからない。もちろんこの両国で、日本の方がコロナ対策が優れているということではなく、残念ながらブースター接種にかかわらずオミクロン変異株の流行は起こっているということだろう。

3. ブースター接種は重症化を防げるか?

コロナワクチンは感染を防げなくとも重症化は防ぐというのが、いつの間にか言われるようになった。ブースター効果にしても、同様の論調が見受けられる。

が、ワクチン接種率とコロナによる死亡率を比較するとき、罹患率の比較以上に困難がある。ワクチン接種以外に罹患者年齢、医療体制と医療内容、死亡原因がコロナといえる根拠はどこにあるかなどが国、集団によってかなり異なっている。また、接種時期と死亡時期とのずれをどのくらいに見積もるかでも違いが出てくる。オミクロン変異株の流行のピークがいつ頃かでも解釈の違いとなる。概して欧州はアジアに比べコロナ死亡率が高いようである。

これらを考慮しながら、日本と韓国のブースター接種率と死亡率を比較してみた。接種率、オミクロンの流行開始時期以外はほかの国ほど違いわないと考えたからである。以下の図では点線が日韓のブースター接種率、実線が死亡率を示してある。接種率データの最終日は2月23日、死亡率(新規死亡者数/100万人)の最終を2週ずらしてある。例えば日本の2月23日の新規死亡率は1.812人/100万人であるが、図では2週前の2月9日の新規死亡率として記載してある(資料として用いたオックスフォード大のOur world in dataの最終日が2月23日のため)。ブースター接種率は韓国が約60%、日本は15%である。

この図を見ると、2月9日の日本の死亡率は1.8人、韓国は1.3人であり、ほとんど差がないとも言えるが、日本が多いともとれる。が、伸び率からみると、日本はピーク、韓国はまだピークに達していない。従ってブースター接種の死亡阻止効果は日韓の比較では認められないと推定できる。

4. まとめ

ブースター接種でさえオミクロン変異に対する重症化阻止効果については、なお世界的規模での分析が必要なほど肯定的評価を与えることはできない。一方罹患防止効果については限定的と言わざるを得ない。小児の場合重症化はしないし、本号で入江氏が展開しているように死亡を含めた重篤な副作用が存在する。したがって現段階で小児へのワクチン接種を勧めることは非科学的と言わざるを得ない。

大手前整肢学園 山本