大阪は新型コロナウイルス感染症死亡率が全国最悪 維新の公的医療・公衆衛生破壊が元凶(NEWS No.559 p07)

第6波の2021年12月17日から22年3月13日までで見ると、感染者数は大阪52万6381人、東京73万9886人。しかし死者については、大阪1232人、東京774人、感染者に占める死者数(死亡率)は大阪0.23%、東京0.10%と倍以上の差がある。全国の死亡率は0.20%。2月26日までの大阪の死者は約97%が60代以上。厚生労働省のデータで21年12月15日~22年3月8日の人口10万人当たりの60代以上の感染者数は大阪が768人で、東京(544人)の約1.4倍。5人以上のクラスターが発生した高齢者施設は、東京で22年1~2月に122施設、約1900人、大阪で3月2日までに351施設、6093人。大阪は件数、感染者数とも東京の約3倍。大阪の第6波の死者の23%は感染経路が高齢者施設と推定されている。府内では軽症・中等症病床の使用率が100%を超えることもあり、高齢者施設で感染者が確認されても、府の要請で施設内での療養を余儀なくされ、入院ができず感染が拡がったケースがある。

大阪では公立病院の独法化を全国に先駆けて進めてきた。’07年に府立5病院が、’14年に市立4病院が独法化され、儲けが優先になった。この流れは’10年に維新行政になってから加速した。

公立病院の独法化や統廃合が進められてきた背景として、厚労省は’25年までに全国の病床の16万~20万床削減を目標にしている。もともと日本はG7でいちばん医師数が少ないうえに、公立病院が全体の2割と英国8割やドイツ5割と比べ極端に少ないのに、国民の命が守れなくなる。

大阪府では、2008年に「大阪市廃止(大阪都構想)」を政治目標にした橋下徹知事が誕生してから人口10万人あたりの府職員数は86人と全国最低レベル(ワースト2位)まで削減され、医療や衛生部門の職員数も大幅に減少した。保健所の統合も進め、07年には748人いた大阪府の保健所職員は、19年には506人と、3割以上削減された。府立病院と市立病院の統廃合や独法化も背景にある。国の方針を先取りして病床数削減も進め、大阪府の病床数(病院)は07年の11万840床から18年の10万6920床と3920床減り、10万人あたりの総病床数は1197床で、全国平均の1212.1症を下回る。なかでも感染症病床は10万人あたり0.9床で、全国平均(1.5床)を大幅に下回り、全国ワースト2位だ。

現在、全国で新型コロナ感染者を受け入れている病院は公立・公的病院が約7割を占めている。大阪府は523病院のうち、医療法人等の割合が89.5%と、全国平均(81。1%)よりはるかに高い。民間病院でカバーできない感染症病床などの医療体制を担保するのが公立病院の役割にもかかわらず、維新行政は次々に統合・独法化してきた。

保健・衛生部門も大きく削減された。全国的にも、1990年度に850カ所あった保健所が、2019年度には472カ所にまで減少している。大阪府の保健所は1990年度の53カ所から、現在は18カ所と約3分の1に減少(太田府政時代)。また大阪市では24区にあった保健所が市内1カ所に集約され、24区は保健所機能のない保健センターに格下げされた。さらに職員の非正規化などで人口10万人当りの保健師数(2020年)は、全国平均の44・1人に対し、大阪府は約半分の22・7人だ。

さらに、2017年4月、府立公衆衛生研究所と市立環境科学研究所を統合して独法化し、人員が削減された。衛生研究機関の独法化は全国で大阪が唯一で、公衆衛生行政軽視がはなはだしい。

2018年には、府立急性期・総合医療センターと「2kmしか離れていない」との理由で、市立住吉市民病院を廃止して同センターに統合し、小児・周産期医療を含む一般病床100床が削減され、「せめて閉鎖病棟をコロナ対応に」との市民や医療現場の声を無視して2020年4月に解体した。

橋下府政時代の2009年度からは大阪赤十字病院への補助金をゼロにし、11年には千里救命救急センター(済生会)に対して過去5年間支出していた補助金を廃止。13年には、府立泉州救命救急センターを独法化させ、同じく独法化した「りんくう総合医療センター(旧市立泉佐野病院)」に移管・統合した。急性期医療が集約統合されたことで、救急搬送困難事例が、大阪府は全国ワーストクラスの多さとなり、コロナ患者の搬送でも大きな足かせとなっている。

さらに関西一の生徒数を誇り、看護師不足の解消に貢献してきた大阪府医師会看護専門学校は、「大阪府・大阪市の財政再建を名目に一方的に補助金が打ち切られた」(大阪府医師会)ことが一因となって2022年3月で看護師養成事業を廃止することになっている。2007年には大阪市と大阪府から年間合計5900万円あった運営補助金が、維新行政のもとで半減されたうえに12年に完全に打ち切られている。さらに大阪赤十字看護専門学校(閉校)、淀川区医師会看護専門学校(募集停止)など養成機関の減少が目立っている。コロナ禍で受け入れ病床だけでなくすべての医療現場が医療現場が看護師不足にあえいでいるのに看護師要請を縮小するとはとんでもないことだ。

特に維新の行政下で、大阪では、急激に公立病院を独法化、統廃合などで大幅に削減し、人員も大幅に削減した。2007年の大阪府の公立病院には医者と看護師が8,785人いたが、2019年には数半分以下の4,360人となっている。保健所は、中核市に新たに設置したものの、大阪府の管轄する保健所を廃止して、府域全体としては減っている。保健所体制の崩壊は、その後の治療を逼迫させる。検査が遅れることが感染者捕捉の遅れにつながり、市中感染を拡大する。無症状や軽症段階での治療の遅れによって重症患者が増加する。重症者の増加は、医療機関を逼迫させ、ますます患者受け入れが困難になる。公衆衛生と公的医療を破壊した維新政治が、大阪で死者が全国最多となる事態を招いたといえる。

梅田