いちどくを この本『子宮頸がんワクチン問題 社会・法・科学』(NEWS No.559 p06)

『子宮頸がんワクチン問題 社会・法・科学』
メアリー・ホーランド /キム・M・ローゼンバーグ/アイリーン・イオリオ 著、別府宏圀 監訳
みすず書房 5,000円+税
2021年8月刊行

<その2>

昨年11月26日第72回予防接種・ワクチン分科会副反応部会は、’13年6月より続けていたHPVワクチンの「積極的勧奨差し控え」を終了とし、本年4月より「接種の呼びかけ」再開としました。私の近隣の医院では既に本年1月、all women jp(注)、グラクソ・スミスクライン社提供と併記した「子宮頸がん予防ワクチンを接種できます」との掲示を出していました。手書きのメモ「無料です。計5万円相当」も添付されていました。しかし上記のall women jpのサイトではワクチン勧奨と共に勧めている「ワクチン接種した後も定期的に子宮頸がん検診を受診しましょう」については注意喚起する掲載をしていません。

このワクチンが2009年10月認可、’10年11月「ワクチン接種緊急促進特例交付金」により公費接種となり、続いて’13年4月予防接種法に基づく公費による定期接種となるものの、同6月より8年以上の「勧奨差し控え」となった理由を不問に付す宣伝チラシです。

(注)「すべての女性に知ってほしい子宮頸がん情報サイト」のこと。なお、新型インフルエンザ(2009年流行)のワクチンが不要となり輸入解約に至った際、厚労省からの違約金をグラクソ・スミスクライン社は受け取っていません。

このような状況なので、HPVワクチンの問題を網羅している本書の一部分ですが、もう一度紹介させて頂きます。

本書の「まえがき」には「私たちは医師や科学者ではないが、私たちの視野がこの議論にとって重要であると信じている」とあります。

本書が著者らの憶測や思い込み、捏造でないことを示すものは全29章400頁を超える記述それぞれに付けられた注番号です。脚注はほぼ1400ヶ所に及び、FDA(米国医薬品庁)、CDC(米国疾病管理予防センター)などの公文書を始め、出典の文献やネット情報のURL、著者らによる説明なども加えた「注」の欄は82頁です。「社会・法・科学」など多分野にわたるHPVワクチンの資料集とも言えます。

臨床試験(人間を対象とする試験)は「インフォームド・コンセント規範の青写真となってきた」ニュルンベルク綱領やヘルシンキ宣言(ヒトを対象とする医学研究においては、被験者の福利に対する配慮が科学的及び社会的利益よりも優先されなければならない:日本医師会訳)を遵守しなければなりません。

「米国の法律によれば、ワクチンの場合、製造企業はFDAにワクチンの安全性、純度、効力を保証せねばならない」とありますが、著者らは「HPVワクチンの臨床試験が悲劇的な結果への道を開いたこと」を明らかにしています。

#1  第1相試験と第2相を一部同時進行、第2相試験完了の約2年11ヶ月前に第3相を開始など、各相の結果を待たずに試験を平行実施。

#2  第3相被験者へのパンフレットには「このワクチンはすでに徹底的にテストされているので副作用はない」と、ワクチンの安全性は証明済みとした。

#3  臨床試験対象者の半数は’02年プラセボ・ワクチン(活性物質を含まないワクチン)、その後‘04年は生理食塩水のプラセボ注射と説明していたが、プラセボはアルミニウム・アジュバント(免疫システムを強化し既知の毒性を有する物質)であった。

#4  ヒト被験者として健康な若い女性を偏重し、研究目的の評価に支障をきたす恐れのある状態の被験者は除外……「健康者バイアス」は「ワクチンの有効性を過大評価し、リスクを過小評価する結果につながりかねない」

#5  HPVワクチンが子宮頸がんを予防するかどうかのテストはされていない。子宮頸部異形成(CIN1,2,3)発生に対する予防効果を「代理エンドポイント(最終目的)」としているが、最も進行したCIN3であっても、HPV感染者の0.18%が子宮頸がんに進行する自然経過から鑑みると「不完全な代理指標」との批判がある。

(注)しかもCIN3への予防効果には有意差が証明されていません。医問研ニュース第521号「HPVの効果判定;林敬次氏」を参照下さい。

#6  FDAによるファストトラック指定と優先審査 (臨床試験経過の合理化と審査期間の短縮)

#7 試験での有害事象報告を「新たな医療的状況」と言い換える、安全監視上に生じた「不正」とも言える問題。

#8 臨床試験中の年齢調整死亡率は米国の若年女性のバックグラウンド死亡率のほぼ2倍であった。###まだまだ続きがあります。一読を!

この書物を日本語で読むことが出来たことを有難く思っています。

伊集院