医問研4月例会報告 コロナ経口治療薬「モルヌピラビル(商品名;ラゲブリオカプセル)」に関するBMJへの「rapid response」の、その後の経過(NEWS No.560 p02)

BMJの論文に対する意見を書くコーナーrapid responseというのがあって、モルヌピラビルに関するNEJMのRCTデータでは、前半のデータでは薬に、後半のそれでは毒になる可能性大と書いたことは3月号でお伝えしました。

Rapid responseは掲載されましたが、著者からは何の反応もありませんでした。Peter Doshi氏に、

「著者の方々の反応があることを願っています。 そうでない場合は、いつでも電子メイルでこの迅速な回答について注意を喚起し、公開対話に応じるかどうかを尋ねることができます。」

と教えてもらいましたので、筆頭著者にメイルを送りましたが何の反応もありませんでした。

それならば、と4人の著者に同じ内容を送りましたところ、筆頭著者から

「以下は私の個人的な見解であり、それ以上のものを代表していると解釈しないでください。特にWHOを代表するものではありません。私は、あなたが注目する結果は、偶然の産物である可能性が高いと思います。それが、この違いを説明する最も有力な方法だと思います。」

林が指摘したことは単なる偶然の産物だと、馬鹿にした返事でした。

そこで、私は

『早速のご回答をありがとうございました。私が注目する知見が偶然であれば、モルヌピラビルの効果は以下の理由から全くの偶然に示されたものであり、全く証明されていないものになります。プラセボの「入院または死亡」の比率は、中間解析では53/377、中間解析後は15/322、RR=3.02(95% CI, 1.74~5.25) と両者で異なります。他方、最終解析ではモルヌピラビルの効果はRR=0.70で95%信頼区間は0.49から0.99です。もし、私が指摘したことが偶然によるものであれば、「モルヌピラビルの効果」はより偶然によるものであり、全く信頼できないことになります。』

とのメイルを4人の著者に送りました。それに対しては、筆頭著者から

「…申し訳ないが、信頼区間は(ギリギリ)効果なしを除外している。」

という返事で、「(ギリギリ)」は信頼できないものだと半分認めたようなものです。

これではまずいと思ったのか、同日すぐに次のメイルも来ました。

「また、すべての利用可能な臨床試験からのプールされた推定値(介入を判断する基礎となるもの)が必要な場合は、こちらをご覧ください。https://www.covid19lnma.com/sof-treatments?int1=molnupiravir&int2=standard+care%2Fplacebo

入院情報は以下の通りです。入院(28日以内) 5件のRCT。4688 例 オッズ比: 0.54 (95% CI 0.3 – 0.9) 差異: 1000人あたり19人減少(95% CI 29%減~5%減)ご検討ありがとうございました」

そこで、このアドレスを開けてみると、molnupiravirのRCTを調べたとする1-6RCT の結果を載せていました。

死亡率(6RCT)の信頼性「very low」、人工呼吸(1RCT)の信頼性「very low」、入院(5RCT)の信頼性「low」となっていました。最新のWHOのガイドラインでは、「これらの懸念とデータのギャップのために、モルヌピラビルは、入院のリスクが最も高い非重症のCOVID-19患者にのみ提供されるべきです。これらは通常、COVID-19ワクチン接種を受けていない人、高齢者、免疫不全の人、慢性疾患のある人です。」としています。しかし、その根拠は示されていないように思います。

私はこれらRCT自体の信頼性に問題があると指摘しているのですから、議論のすり替えです。

求められるのは、BMJの前・現編集長と副編集長が要求したように(3月号2-3面)、それを正確に評価できるように全てのデータを公開することです。

はやし小児科 林