行政の責任放棄を許さない。ワクチン偏重から保健所、医療体制拡充へ(NEWS No.561 p01)

4月27日開かれた第32回厚生科学審議会予防接種・ワクチン部会で4回目の新型コロナワクチン接種(2回目ブースター接種)が承認された。3回目接種後5か月以上かつ接種対象が60歳以上(加えて基礎疾患を有する18-59歳他)に限られ、努力義務接種から推奨接種となった。

これに先立つ4月6日、EU医薬品庁(EMA)と欧州CDC(ECDC)は共同で4回目接種に関する声明を出した。歯切れの悪い文章であるが、「(60-80歳の)人たちに対し2回目のブースター接種(4回目接種)の差し迫った必要性の兆候はない」とし、60歳未満に対しても、「2回目のブースター接種をしても重症化や死亡を継続して防げるというデータはない」と宣言している。4回目の接種についてのデータはイスラエルからのみであるとし、「健康人にmRNAワクチンの4回目接種をすると、3回目接種直後に見られるレベルまで液性免疫を回復できる」が「オミクロン感染に対する防御が、3回目の接種を受けた後に観察されたのと同様の速度で衰える」とされ、4回目接種は時期尚早と述べている。

このように当初の宣伝と異なるワクチン有効性の低下の速さの中で、ワクチンを中心とした世界の新型コロナ対策は混乱してきている。4回目接種に先立つ3回目接種(1回目のブースター接種)ですら接種率は低迷している。デルタ株やオミクロン株の流行を理由に、イスラエルやUSAでは昨年から、その他の国でも今年の1月から3回目接種の宣伝が始まったが5月8日現在、最も3回目接種率の高い韓国での接種率が70%、ドイツやイタリアで65%、イスラエル、UK、フランス、日本で55%、USAに至っては30%にすぎない。

3回目接種率の低さの中で4回目の接種を叫んでもデータは限られている。EMA/ECDCが述べるように依拠すべきリアルワールドデータはイスラエルからの報告に限られている。

注目のイスラエルからのリアルワールドデータを見ると、3回目まで接種した人たちと比較して、4回接種した人たちは、コロナ罹患阻止効果が接種後2週でピークとなりRRで2.1倍になった。その後阻止効果は低下し、8週までに有意の差はなくなってしまった。

日本の審議会の結論はこのような詳細の背景説明もなく、ワクチン接種にコロナ対策を預けっぱなしである日本の対策の不備と責任を隠すものである。私たちは新型コロナを普通のかぜとはとらえていない。高齢者や基礎疾患を持っている人にとっては重要な感染症として対応すべき疾患と考えている。PCR検査は拡大しなければならない。ワクチンを強制すべきでなく、増員を含めた保健所を中心とした予防体制の拡充を図ること、過不足なく入院できる医療体制の確保、体調の悪い時に休める職場改善を進めることなどで乗り越えるべき疾患と考えている。

ワクチン分科会は責任放棄しつつなおワクチン偏重という方針を貧困な感染症医療体制の拡充方針に転換すべき時にきていると考える。