例会で議論したコロナ経口治療薬「モルヌピラビル(商品名;ラゲブリオカプセル)」への批判文章が、BMJの論文に引用され、浜六郎氏と共に正式な「letter」として掲載(NEWS No.561 p04)

前回は、私がrapid responseをWHOによるモルヌピラビルの推奨を紹介した著者たちに送付し、彼らの見解を求めたこと、最初は林を馬鹿にした返事でしたが、それへの反論により、モルヌピラビルの効果の信頼度が、「大変低い」ないし「低い」ものであることを認めているとの返事でした。

<モルニピラビル批判の論文に引用される>

その後、BMJに掲載された、「コビット-19 抗ウイルス剤モルヌピラビルのエビデンスは?」と題してモルヌピラビルの効果に疑問を投げかけた論文1)が掲載されました。著者はAndy Extanceというフリーのジャーナリストです。このような人の論文はBMJの論文ではよく見かけることです。

この論文は、「モルヌピラビルとは?」として、英国が48万回分の調達を発表したものであること、などを紹介しています。その中で、モルヌピラビルはインフルエンザに対する臨床試験を開始する予定だったことを紹介しています。

みなさんは、富士フィルムの子会社が抗インフルエンザ薬として開発した「アビガン」が変異性があるためにその使用が封印されていたが、コロナで幽霊のように現れたことを思い浮かべたと思います。

同様に、インフルエンザでは使えなかった「薬」をコロナなら使えるとメルクは考えたのでしょうか。

「モルヌピラビルはどのように作用するのですか?」という節では、モルヌピラビルは成長するRNA鎖に連結し、ウイルスの遺伝暗号にエラーを発生させる。そのため、突然変異を起こしたり、細胞を殺してしまう可能性があることを紹介しています。

「モルヌピラビルのピアレビューされたエビデンスは何ですか?」の節で、Andy Extanceは、臨床試験の結果を以下のように紹介しています。

最初、メルク社は「入院・死亡」という主アウトカムを5割減らすとプレスリリースし、大宣伝をしました。しかし、その効果を3割に変更したことに著者は疑問を呈し、「2021年12月にNew England Journal of Medicine誌に掲載された1433名の全例の結果では、入院や死亡はモルヌピラビル群で約30%しか減少せず、有害事象が発生する患者の割合は両群で同程度であったという。」と問題点を指摘しています。

その後で、「10月から12月にかけてのわずかな有効性の低下と思われる現象は、深刻な懸念となり得る。これは、モルヌピラビルを服用した人が、プラセボを服用した人よりも10月から12月の間に入院や死亡のリスクが高かったことを意味する、と批判する人もいます。」と林のrapid responseを引用しています。(ただし、林敬次がHayaski Kと間違っています。)

紙面の都合でこの論文の紹介は止めますが、その他の批判的内容も原文でお確かめください。

<林と浜氏のrapid response がBMJの正式な「letter」として同時に掲載されました。>

それと前後して、BMJ編集部の方からメールがきて、「LIVING WHO GUIDELINE ON MOLNUPIRAVIR FOR COVID-19」への正式なletterとして掲載するから300文字に短縮するよう求められ応じたところ、しばらくして掲載されたとの連絡がありました。Rapid responseと違い、これで正式な文章として、PubMedにも以下のような題で収録されることになりました。題は、「Molnupiravir might be dangerous without clarification of its indications.」2)で名前もちゃんとKeiji Hayashiと間違わず載っていました。

同時に、浜先生のLetter3)も掲載されましたので、ぜひ読んで下さい。

1) Covid-19: What is the evidence for the antiviral molnupiravir? https://doi.org/10.1136/bmj.o926

2) http://dx.doi.org/10.1136/bmj.o1030

3)http://dx.doi.org/10.1136/bmj.o977