医問研4月例会報告 妊婦へのコロナm-RNAワクチンの安全性は証明されているか?(NEWS No.561 p04)

妊婦へのコロナm-RNAワクチンの安全性は証明されているか?
調査のアウトカム(有害事象)の項目が問題

妊婦へのワクチン接種の安全性について、以前から、胎児への影響などについて気になりながら、特に検討していませんでした。

今回知人の妊婦さんにワクチンの是非について問われて勉強し、4月号の例会に報告して検討してもらいました。まだ、結論は明確ではありませんが、安全性への製薬やWHOの取り組みにいくつかの問題点があることがわかりましたので以下報告します。なお、これらの論文は調査項目を「アウトカム」としていますが、「有害事象 (Adverse Event)」の方が正確と思いますので、念のためアウトカム(有害事象)としました。

<厚労省の妊婦への接種「努力義務」に忖度した日本産科婦人科学会の決定>

日本産婦人科感染症学会・日本産科婦人科学会は昨年5月12日には、「被接種者に、長期的な副反応は不明で、胎児および出生児への安全性は確立していないことを事前に十分に説明する。」としていました。1)ところが、今年2月21日には、日本産科婦人科学会は「国内の8割近い妊婦さんが1回目、2回目接種を受けており」効果の面では「妊婦は重症化リスクが高いことを示唆する報告がある」ので接種しておいた方がよく、「安全性に関する特段の懸念を示唆するエビデンスもない」としています。2)この変更は、厚労省が妊婦接種の「努力義務を課す」とした決定を受けてなされた「忖度」の可能性が大です。

<WHOの「安全」の根拠>

また、厚労省と同様にWHOは妊婦への接種を奨励していますが、「安全」性の根拠として、米国・英国・ブラジル・インドのデータを挙げています。3)今回は、これらを全て検討することは困難でしたので、そのうちの米国のデータとしてWHOが挙げている、Shimabukuro TTらのNEJM論文4)と、Zauche LH et al (NEJM), Kharbanda EO et al. (JAMA)の「手紙」を中心に検討しました。

<NEJM論文は、特に妊娠初期は「不明」>

2021年6月発行の先のNEJM論文4)で ShimabukuroTTらは、妊婦の安全性についてのデータが少ないので調査した、としています。結論として、はっきりした安全性への「信号」(危惧)はなかった、としながらも、より長期の多人数の観察が必要としています。何しろ、たった827人のデータです。WHOが安全とするにはほど遠い少ない人数の分析ですので、比較的稀なアウトカム(有害事象)も感知できないのが、この研究の当然の「限界」です。

この論文のアウトカム(有害事象)は、「自然流産」「死産」「早産児」「Small For Gestational age」「先天性形態異常」「新生児死亡」で、比較対象はコロナが始まる前のこれらのデータ(historical cohort)です。また調査対象の大部分が、「第3妊娠期では」とワクチン接種時期の妊娠期間を限定しています。

<NEJM論文の補完「手紙」の安全とする根拠は「自然流産」が増えなかったのみ>

これでは、1-2期の妊婦での安全性は不明ですので、接種はできません。そのため、ファイザーや規制当局があわてたのかどうかわかりませんが、彼らがNEJMとJAMAの米2大医学雑誌に、本格的な論文より素早く掲載できる「手紙」(letterかcorrespondence)を投稿させたものと思います。

先の論文発表の3か月後の2021年9月発行のNEJMの「手紙」5)では、妊娠前または妊娠20週までの妊婦では、計19724人の妊婦の自然流産率を、コロナが始まるまでの自然流産率と比較する「historical cohort」で、有害作用は見られなかったとしています。しかし、「これで初期も安心というデータと」と思うことはできません。比較したアウトカム(有害事象)はなんと自然流産だけでした。

その直後の、2021年10月には今度はJAMAへの「手紙」6)が掲載され、やはりアウトカム(有害事象)が「自然流産」だけでした。ただ、編集者などに妊婦の安全性の評価として「自然流産」だけでよいのか、と指摘されたためか、著者らは「自然流産は、妊産婦のワクチンの安全性に関する研究において優先すべき転機とされており」(文献4)といいわけしています。そして、妊娠早期に接種したデータでも、CDCの「The Vaccine Safety Datalink」のデータと比較して、自然流産」が多いとはいえないと、ワクチンの「安全性」を宣伝しています。ちなみに、この著者たちは、NEJMの「手紙」の著者たちと違い、ファイザーとの利益相反を開示しています。

<引用した文献の内容をゆがめて「自然流産」だけのデータを肯定>

先の、引用文献に関連した嘘をついていないか確認のために、引用文献7)(この「手紙」の「文献4)」を読みました。そうすると、この引用文献では「自然流産」だけではなく、「自然流産と子宮外妊娠は、ワクチン登録に含めるべき、あるいはワクチン研究における重要なアウトカムとして含めるべき重要な妊娠アウトカムである。」と書いていることがわかりました。7)もう一度このJAMAへの「手紙」6)を調べましたが、子宮外妊娠のことは全く書いていなく、ここでもごまかしがありました。

<妊婦への接種の胎児の安全性は多くのアウトカムの検討が必要>

また、前述のShimabukuroTTらの本格的な論文4)では、アウトカム(有害事象)は、「自然流産」「死産」「早産児」「SFG」「先天性形態異常」「新生児死亡」を検討して、妊娠3期は「安全」としています。他方、「助っ人」からの2つの「手紙」は「自然流産」だけのデータだけなので、この論文を補完して、妊娠初期のmRNAワクチン接種は安全だとの証拠にはなりません。にもかかわらず、WHOまるで、妊娠初期の接種の安全性を示す重要な論文の様に祭り上げているのです。

以上がWHOが「安全性を示」したいい加減な資料でした。

<最新の論文も妊娠初期のデータなし>

そのためか、今年に入りJAMA誌に、カナダの97590人のPopulation-based retrospective cohort study in Ontarioが掲載されました。8)アウトカム(有害事象)は、産後出血、絨毛膜羊膜炎、帝王切開分娩(全体および緊急帝王切開分娩)、新生児集中治療室入院 帝王切開(全体および緊急帝王切開)、新生児集中治療室(NICU)への入院、新生児5分間アプガースコアの低さ(7点未満)という、多数です。しかし、「結論と関連性」には「研究の解釈は 妊娠中に受けたワクチン接種は、主に第2期と第3期に行われたmRNAワクチンであったことを考慮する必要があります。」と、妊娠初期は評価していないとしています。なにしろ、下図のように、観察された2回接種の妊婦のほとんどは、3期だったのですから、妊娠初期は評価できません。

(上図は1回接種、下図は2回接種の接種人数の妊娠期間中の推移、左から妊娠第1,2,3期。左端の第1期はほとんど接種していない)

下表のように、妊娠中のmRNAワクチン接種の安全性についてのアウトカム(有害事象)の調査項目は論文によりあまりにも違っています。中でも、「自然流産」だけのデータでは駄目であることは明白です。

特に妊娠初期にはデータが全く不足していることが明らかになりました。世界中の妊婦に接種されているこのワクチンが「安全」だとしてWHOが依拠している研究がこの程度の質であることに驚かざるを得ません。

<文献>

1)  https://www.jsog.or.jp/news/pdf/20210512_COVID19.pdf

2)  https://www.jsog.or.jp/news/pdf/20220221_COVID19_kaiin.pdf

3)  https://www.who.int/publications/i/item/WHO-2019-nCoV-FAQ-Pregnancy-Vaccines-2022.1

4)  Shimabukur TT et al. N Engl J Med 2021; 384: 2273-82 https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/nejmoa2104983

5)  Zauche LH, Ph.D., M.S.N https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMc2113891

6)  Kharbanda EO et al. JAMA October 26, 2021 Volume 326, Number 16 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8427483/

7)  Rouse CE et al; Vaccine. 2017;35(48 pt A):6563-6574. doi:10.1016/j.vaccine.2017.01.047 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29150062/

8)Fell DB et al. JAMA. 2022;327(15):1478-1487. doi:10.1001/jama.2022.4255 file:///C:/Users/Owner/Downloads/jama_fell_2022_oi_220031_1649698923.61332.pdf