モヌルピラビル批判を、コロナで破壊されつつある薬剤評価の科学性を取り戻す契機に(NEWS No.563 p06)

コロナの飲み薬モルヌピラビル(商品名:ラゲブリオ)の英・米・日などの緊急承認(日本ではより正式承認に近い「特例承認」)がされました。

BMJへの「Letter」として掲載される>

モルヌピラビルが承認の根拠になるデータの問題点は、今年1月の医問研臨床薬理研究会で討議されました。そのモルヌピラビル認可データ批判報告が、浜六郎氏と林の個別の文章でBMJの[rapid response]に投稿され、3月8日に同時に掲載されました。さらに、両者はPubMedに掲載される正式な「Letter」として4月26日に掲載されています。この日には「(現在進行中の)パノラマ試験が報告された後、モルヌピラビルの承認を再評価する必要があります」とのモルニピラビルの承認に関する批判的論文が掲載されています。

3月にBMJでモルヌピラビル批判開始>

BMJの紙面では、すでに3月3日に「モルヌピラビルの認可は時期尚早だった」、などのこの「薬」の承認についての批判論文が掲載され、4月13日掲載の論文「抗ウイルス性モルヌピラビルの根拠は何ですか?」には、林のrapid responseが引用されました。

BMJの論文が共同通信記事で配信>

これらの一連の論文をまとめた記事が、共同通信の配信で、東京新聞や京都新聞など多数の地方紙に大きく掲載されました。その記事には、浜氏の解説がされています。

医問研例会で討議された内容が、国内の新聞に大きく掲載されるのは久しぶりで、コロナ問題では初めてのことです。世界「4大医学雑誌」の一つBMJに掲載されたことで、新聞記事にしてもらえたものと思います。

この記事は、塩野義製薬の経口コロナ薬「ゾコーバ」が認可されず「継続審議」になったことにも一定の影響を与えているとおもわれます。

<「4大医学雑誌」の中でのBMJの位置>

コロナに関するワクチンや多くの新薬の臨床研究は、NEJMに掲載されました。このモルヌピラビルに関しても「効いた」とする論文が堂々と載っています。一体、NEJMのレビューアーたちは何を見ていたのか不思議になるほどです。その他の4大医学誌にも、怪しい「効いた」論文が、次々と掲載されています。

BMJは他の4大医学雑誌などと違いこのような科学的な記事を多く載せることができるのは、根拠に基づく医療(EBM)がかなり浸透し、しかもほとんどの医師が公務員である医師会が経営母体だからだと思います。

<コロナでより明白になった有名医学雑誌への製薬の浸透>

その点は、医師の大多数が製薬企業に取り込まれている、あるいは薬や検査で儲けないと経営が成り立たなくされているアメリカや日本など大多数の国の医学雑誌では、そうはいきません。また、独立して医学雑誌を発行しているはずのNEJMなどは、製薬会社による発行部数の何割かの買い占めなどによる経営への参画により掲載内容が著しくゆがめられていることが今回のコロナでよりはっきりしました。その典型例がNEJMのモルヌピラビルの第三相試験論文です。

コロナを利用した製薬巨大企業の薬剤評価の科学性の破壊により、かえってこれまでの医学雑誌と製薬企業や政府規制当局、マスコミなどとの癒着の構造が分かり易くなり、市民がより認識しやすくなるチャンスでもあります。

医問研は、今後とも例会などで討議した内容を世界的な雑誌にも掲載するよう努力し、科学破壊に抵抗します。

はやし小児科 林敬次