経口コロナ「薬」ゾコーバの審査で明白になった「緊急承認」制度の危険性(NEWS No.564 p01)

6月22日、厚労省薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会は塩野義製薬の経口コロナ治療「薬」ゾコーバの「緊急承認」を見送りました。そして、7月22日、先の審議会医薬品第二部会と「薬事分科会」の合同会議を公開で開き審査をしましたが、ここでもゾコーバの「緊急承認」を見送りました。このニュースは一般のマスコミまで取り上げられ多くの市民に知られました。

翌23日の塩野義の株価も6105円と1月27日以来の最安値となりましたが、すぐに23日以前に持ち直したことは、今後「緊急承認」認可される可能性が大きいことを示唆するものとして注目しなければなりません。

政府は、塩野義との間で、認可承認を前提にすでに100万人分の購入契約を結んでいます。

すでに、今年2月には塩野義製薬がゾコーバの承認を厚労省に申請し「条件付き早期承認制度」の適応を要望していました。しかし、その後承認制度の適応を「緊急承認」制度に変更して、承認を得ようとしたのですが、上記の経過で今回の承認を認めらなかったわけです。

これらの審議では、医問研例会で議論されたそれを反映したLetterも含めて、3月から4月にかけてBMJに先発の経口抗コロナ「薬」モルヌピラビル(商品名ラゲブリオ)に対する批判論文の掲載と、それらの記事をまとめた共同通信の記事が5月末から6月末に全国の主な地方紙に掲載されたことも一定の影響を与えたものと考えられます。

この「緊急承認」制度は5月13日の国会で成立、20日に施行したものであり、大変緩い(悪い)日本の薬剤承認方法をさらに大幅に緩め、薬剤評価の科学性を破壊する内容です。その中心は、なんと薬剤の認可に不可欠の臨床的効果を証明していなくても良いとしている所です。その効果が「推定」できれば良いというものです。

塩野義が、この制度での審査に飛びついたのは臨床試験がまだ第Ⅱ相までしか結果が出ていないゾコーバでも「緊急承認」であれば承認されると見込んだものです。

その第Ⅱ相では、その効果とは、患者のウイルス量の抑制が服薬4日目でプラセボより有意に減らせた(6日目では有意差なし)というものです。

臨床的効果として提出されたのは、12項目の臨床症状でした。全項目での評価では効果なしで、そのうち、鼻水・喉の痛み、咳、息切れだけでは効果を示したとしたのです。この議論は、最初にたくさんの評価項目の中から有意差を示す効果を選び出すのは、いわば「後だしジャンケン」で不当だと、審議の中でも批判されています。

ところで、先行する経口コロナ薬の主アウトカムは「入院ないし死亡」です。実は、第三相試験の主アウトカムは、「任意の原因による入院または任意の原因による死亡」です。これは事前に登録している

[https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT05305547] に明記されています。ですから、この臨床アウトカムで、プラセに対するゾコーバの統計的有意差を証明しなければ、Ⅱ相試験などの一連の臨床試験は意味をなさないのです。単なる、鼻水などの症状の緩和では、この治験薬の有効性は証明されたことにならないのです。

このように、これまで必須だった第Ⅲ相試験の結果なしに、第二相だけのいい加減なアウトカムによる「効果」の「推定」だけでも認可するという、これまでの薬剤認可の基準を破壊する制度であるが明白になりました。

ゾコーバの問題点を、それが明らかにした「緊急承認制度」の危険性を世界に明らかにしなければなりません。