岸田内閣の「ウィズコロナ政策」の危険性(NEWS No.565 p06)

7月号で岸田内閣のコロナ対策政策が効果を期待できないことを述べました。その後、第7波はこれまでにない感染者と、同様にこれまでにない死者を出して、山を越えましたがまだ続いています。

その後、この政策は「with コロナ」というネーミングで、具体化され9月26日から開始されています。その内容は、1)ワクチンの推進、2)検査は症状が出たら、自分で薬局やアマゾンなどで検査キットを買って自分で実施し、陽性だったら自分で「健康フォローアップセンター」に届け、苦しくなったらオンライン診療をする「発熱外来自己検査体制」、3)医療供給体制も「病床回転率の向上」や、コロナ専用でなくても一般病院・病棟を「ゾーニング」で分けて管理するなど、4)患者の全数把握をやめて「保健所への発生届」は高齢者や妊婦などに限定、5)自宅療養=隔離期間の大幅短縮などです。以上の政策を貫くのは、ウィズコロナの名の通りにコロナを抑制することの放棄と、「自己責任」と「効率化」のオンパレードです。

これらの政策は、第7波の最盛期に向かうときの7月に発表されたものです。その7波で、最大の特徴は、一日の死亡者数はこれまでのどの波よりも多数だったことで、下図の上(感染者数)下(死者数)の推移のように、死者数の激増も一目瞭然だったのです。しかし、マスコミほとんど報道しませんでした。なぜなら、7月の政府方針と矛盾する事実だったからです。

感染者数のうちの死亡者数の率(致死率)がこれまでの波よりも少なかったことを強調する「専門家」がいます。例え感染者に対する死亡者数がこれまでより少なくても、感染者が激増し、死亡数も激増するような病気なら、その感染を止めることに最大の力を注ぎ、かつ感染者が重症になり、死亡することを防ぐのが基本的対策にならなくてはなりません。「自己責任」ではなく感染抑制の政策をまず取られなければならなかったのです。

また、NHKなどは「重症者」が少なかったことは報道しながら、「現場ではコロナにかからなければ亡くなることはなかったというケースばかりだ。ワクチン接種で重症化を回避することを続ける必要がある」などと、ワクチン接種推進に舵を取ろうとしています。しかし、この方針は接種が始まって以来失敗続きです。

もし重症が少ないのに死亡した人が多いのなら、その分析をして感染者の中で重症でなくても死亡しやすい人たちの早期発見と効果的な医療介入の方法を明確にすべきですが、そこは方針もなく、「自己責任」としているのです。

さらに感染抑制の放棄の言い訳に、既に欧米ではどこでも当たり前のことになっていると、マスコミは宣伝しています。しかし、日本と欧米のコロナ感染の経過が大きく違っていることは無視されています。特に、人口に対する全感染者数の割合は、日本の17%に対し、欧州では50%超(フランス)・40%(ドイツ)・35%超(イギリス)です。また、最近の特に死亡者数の波は格段に小さいのです。集団免疫が日本より強く、今後波が小さい可能性は高いのです。

(下図はイギリス感染者(上)と死亡数(下)の推移です。ドイツフランスなども同様です。)

今こそ、しっかりした感染対策と医療機関の充実が求められています。

はやし小児科 林