新型コロナワクチンの有害事象─心筋炎・心膜炎について(NEWS No.566 p06)

新型コロナワクチンの有害事象として心筋・心膜炎に注目した最初の論文は、ワクチンを接種した88万4828人と、同数の未接種者の有害事象発生率を比較したものです。その結果、接種者グループで心筋炎を報告したのは21人で、未接種者グループで心筋炎を報告したのは6人でした。接種者10万人当たり2.37人。未接種者10万人当たりでは0.678人で、その3.5倍です。ポアソン分布によると3倍を超えると統計的に有意な差となり、ワクチン接種をした者に心筋炎・心膜炎が多いという結論になります。(2021年8月25日ニューイングランドジャーナルオブメディシン)

この報告により、新型コロナワクチンの有害事象として心筋炎・心膜炎が世界的に注目され、WHOも注意喚起をおこないました。日本でも、ワクチン接種の医療機関からとワクチン製造製薬機関から有害事象の発生届けがだされるようになっています。そして、その報告基準に心筋炎・心膜炎が明記されています。昨年の10月と今年の8月に中間報告が出されました。8月に報告された分によると、「心筋炎及び心膜炎を副反応疑い報告基準に定めた令和3年12月6日から対象期間までに、製造販売業者報告において、ファイザー社ワクチン、モデルナ社ワクチンについて、心筋炎(ブライトン分類1~3で可能性が高い)として評価された事例は、それぞれ(疑いとしての報告207件中)68件、(同131件中)54件でした。心膜炎(ブライトン分類1~3)として評価されたものは、それぞれ(疑いとしての報告81件中)36件、(同29件中)16件でした。アストラゼネカ社ワクチン及び武田社ワクチン(ノババックス)接種後の報告はありませんでした。」とあり、合わせて174件が報告されています。しかしながら、個々の事例を専門家に評価をしてもらったが、ワクチン接種と心筋炎・心膜炎および疑い(⁼心筋炎関連事件)との因果関係は不明とされています。

ところが、図1のグラフを見ていただこう。

ワクチン接種日からの日数を横軸に、心筋炎の関連事件の発生件数を縦軸にとった経過図(2021年10月のデータ、2022年8月分は現在集計作業中)です。もし、ワクチン接種と心筋炎・心膜炎および疑い(⁼心筋炎関連事件)との間に因果関係が無いのであれば、発生件数は接種後日数とは無関係に推移するはずです。接種当日から14日後までの15日間に、160件の内の143件が均等に配分されると、1日当たり9.5件となります。接種後の翌日から3日後までの3日間に期待値の28.5を3倍も上回る105件が集中しています。76件以上も15日間の内の3日間に集まっているわけですから、こんなことが起こる確率は3/15=0.2の76累乗ですから、7.56の1京倍の1京倍の1京倍の千倍分の1(7.56E-54)というものすごい確率で「偶然ではあり得ない!!!」ということです。

新型コロナワクチンはmRNAワクチンが主体です。ⅿRNAにウイルスの遺伝子情報を組み込みそれを発現させて、抗体を作らせる方法は以前から期待がありました。しかし、ⅿRNAを体内に入れると、強い免疫反応が起きて炎症が起こるために、実用には至っていませんでした。それを変えたのが、RNAのチミジンを構造の似たシュードチミジン(偽チミジン)に置き換えると炎症反応が抑えられることを発見した、今年のノーベル生理学賞医学賞の候補になってマスコミを賑わしたカリコ氏だったのです。このシュードチミジンを組み込んで、新型コロナウイルスの遺伝子情報を持たせたⅿRNAを使って抗体を作らせているのが、ⅿRNAワクチンなのです。ですから、炎症反応が抑えられたとは言っても、絶対に起こらないとは言えません。こうした経緯からも心筋炎の発生は頷ける話なのです。また、心筋炎関連事件が1回目接種よりも、2回目接種後に発生率が高くなっていて、1回目接種によって感作が起こり、2回目接種後に発生率が上がることを示唆しています。

以上、新型コロナワクチン後の心筋炎関連事件はワクチン接種と密接な関係にあり、新型コロナウイルスに感染したよりも発生頻度が少ないからと不問に付されるべきではなく、被害者への補償や、接種時の判断材料に加えられるべきであり、より有害事象の少ないワクチンへの改善が求められるべきであると考えます。

保健所OB  森