コロナ感染の経験から学んだこと(NEWS No.568 p04)

第6波真最中の2022年8月13日、新型コロナウィルス感染症を発症した。初期症状は喉の痛み、38度台の発熱であった。市のマニュアルフォローを受けつつ自宅待機をしていたが、フォロー終了の一週間以降も離床できず、食欲低下、腹痛下痢なども加わったため8月27日病院と連絡を取り入院した。その数日後からコロナ感染の急性期後遺症として認知機能低下などの高次脳機能障害といわれる合併症を経験した。幸い10月14日退院、その前後から状態は改善しはじめ、発症3か月後に職場復帰となった。体重も約8㎏減少した。新型コロナ感染症は肺炎だけでない、全身の消耗性疾患であることを自覚させられた。一方職場ではワクチンをしなかったからという無言の圧力を受け?ワクチンへの対応を整理する必要も感じている。これらの経験から本論ではあらためて新型コロナの合併症を検討し、次いでワクチンの有効性を調査し、さらにワクチン副作用を分析することで自らの立ち位置を見直すこととした。

① コロナの急性期合併後遺症について

まず言葉の定義から。統一表現はないがコロナ発症4週間までに出現する症状を急性新型コロナ感染症という。急性期あるいはその後から60/90日まで続く症状(後遺症)をLong COVIDとする。主な後遺症頻度と後遺症から回復までについてはUpToDateを参考にあげる1)。(表1)

症状回復まで
疲労15-87%3か月以上
呼吸困難10-71%2-3か月
胸部不快感12-44%2-3か月
17-34%2-3か月
味覚障害10-13%1か月
関節痛、頭痛、鼻炎、食思不振、めまい、
筋肉痛、不眠症、脱毛、発汗、下痢
< 10%数週から数か月
PTSD7-24%6wから3か月
記憶障害18-21%数週から数か月
集中力低下16%数週から数か月
不安/うつ22-23%数週から数か月
生活の質の低下50% <数週から数か月

私が経験したような神経学的合併症については、509例の入院患者を対象にした研究で、発症時42%、入院時63%、経過中どこかで82%に神経系合併症が認められた。主な症状は筋肉痛45%、頭痛38%、脳症32%、めまい30%、味覚異常16%、嗅覚異常11%であり、卒中、行動障害、運動及び知覚欠損、失調、痙攣はまれ(それぞれ0.2-1.4%)であった。

脳症について;817例の救急受診高齢者の研究では28%に脳症がみられ、そのうち37%は熱や呼吸困難などのCOVID-19の典型症状はなかった。せん妄や意識レベルの低下、一過性全健忘がみられることもある2)。髄液異常はないがMRIでは脳症の約半数に急性虚血性脳卒中、皮質FLAIR異常などが認められた3)

私の場合も見当識障害、記銘力障害などの高次脳機能障害があり、FLAIR異常も認められた。対象の選び方にもよるが、比較的高い頻度で脳機能障害は起こる。一般的に高次脳機能障害という後遺症が長期に固定するかどうかについては情報が足りなかった。もちろん高次脳機能障害合併は新型コロナに特異的なものではない。

② ワクチンは有効か

Real worldでのワクチン効果については多くの国で研究が行われているが、ここではUKとUSAでの研究論文を示す。

UKでは2021年12月からすべての成人に3回目接種、2022年3月から75歳以上を対象に4回目接種が開始された。ここでは2回目接種後25週を基準に、1回目、3,4回目のワクチン効果を調べた論文を示す。多くの論文と同じようにオッズ比を用いた場合のワクチン効果を(1-Odds)%で比較している。(表2)を見ると3回目、4回目接種とも週を追うごとにワクチン効果が減衰し、3回目は25週、4回目は15週で2回目後の基準との有意差はなくなっている4)

(表2) UKでのワクチン効果の比較

他の国からの報告でも接種当初は効果があるように見えても、ブースター接種としてワクチン回数が増えるたびにピークの効果は減じるし、効果の持続時間も短くなるという傾向は変わらない。

このワクチンを重ねるたびに効果が減衰するという現象に焦点を当てた研究が、USAを舞台にNature Medicineに発表された。ワクチンをしたのに感染した(Breakthrough Infection:BTI)人を対象にした在郷軍人データベースから合併症入院や死亡を含めたワクチン効果を論じたものである。例えば1回接種群に比べ2回以上の複数回接種群では全死亡のハザード比(HR)2.17、入院のHR3.32、後遺症としての肺障害3.54、神経学的障害1.60などを示し、感染回数の増加によって後遺症リスクは増えることを示した。他の雑誌では「短期的ではあるがワクチン効果は高い」という主張が多いが、この論文では「ワクチン接種では死亡や急性期後遺症のリスクを一部しか減らさないという結果となったことは、唯一の緩和戦略としてワクチンに依存することがSARDS―CoV-2感染後のリスク低下の最適な方法ではないことを示唆する。私たちの結果からは、BTIだった人々の急性期後のケアアプローチとしては一次予防戦略の継続が必要であることが強調される」と結論されている5)

③ ワクチンの副作用について

新型コロナワクチンの副反応については、世界的に軽視され日本でも同様である。現在副反応報告については(表3)ような規制があるが、死亡は報告医の裁量によるとされたり、5類問題と絡めて、報告そのものを廃止しようという方向もあり懸念される。

(表3)ワクチン副反応の報告基準6)

12歳以上を対象にしたファイザー、モデルナのmRNAワクチンについて11月11日第88回予防接種ワクチン検討部会までの厚労省発表死亡例をまとめた7)

死亡者は1953名、12-19歳11名、80歳以上974名と加齢とともに等比級数的に増加する。500名を超える循環器疾患(心筋炎/心膜炎59名、その他の不整脈/心臓突然死155名、心筋梗塞などその他の心疾患355名)、脳血管疾患172名などが多い。血小板減少を伴う血栓症が13例、伴わない血栓症が12例に認められた。接種日と死亡日との関係については(図1,2)に示すように接種6日以内、特に3日以内に集中している。60歳で2群に分けると、60歳以上では接種1日後、60歳未満では接種3日後に死亡のピークがある。高齢者ほど接種日に近く、接種後数時間以内に発熱、24時間以内に死亡する人がかなり見受けられる。高齢者の死亡はワクチン以外の紛れ込みが多いからという理屈は成り立たない。接種当日突然死した13歳子、接種3日目に突然死した13歳女子症例は2例とも剖検でも診断がつかず死因不明とされているなどの例を見ると、ワクチン被害の拡大を防ぐために死亡例の詳細な疫学的分析が必要である。(図1,2)

図1

図2

歳から12歳までについては2022年2月21日以降10月まで、338例の副反応疑い報告がある。死亡は2名、11歳の女性と男性。男性はけいれん、脳症、接種翌日の発症。女性は心筋炎、接種2日後の発生とある。そのほか7歳の心室細動例の報告がある。心筋炎の疑いとされ、経過は回復となっているが詳細不明である。アナフィラキシーが30例、そのうち5例はショック。心筋炎/心膜炎が24例報告されている。8歳のギラン・バレー症候群の女性の報告があり、回復していない。けいれんは36例の報告がある。このように副反応を見ていくと、小児に接種することのメリットはない。

④ 最後に

新型コロナは合併症も多い、一筋縄ではいかない難儀な疾患であることをあらためて実感した。行政も含めた社会対応が必要な疾患であることは変わらない。一方当初の95%を超えるというワクチンの効果成績から早期の集団免疫獲得による封じ込めさえ期待されたがReal worldでの有効性はピークでも60%程度に落ち、感染、重症化や死亡阻止効果を含め短期しか持続しないことが明らかになってきた。一方ワクチン接種当日や3日以内に突然死する例も顕在化してきた。多くの国で追加接種が進まないのもこのような背景が推定される。ウィルスによる免疫回避は今後も続くであろう。そんな中で引き続きワクチン被害を強調する立場からの訴えを続けていく必要がある。

【主な参考文献】

1.UpToDate COVID-19:Neurologic complications and  management of neurologic conditions

2.JAMA Open. 2020;3(11):e2029540. Epub 2020 Nov 2

3.Radiology. 2020 Jun 16 : 202222

4.The Lancet Regional Health – Europe 2022;23: 100537

5.Nature Medicine volume 28, pages2398–2405 (2022)

6.コンシューマーネットジャパン どうする新型ワクチン2

7.厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会 第73回―88回資料より

(終わり)

病院勤務 山本