福島原発事故から12年-放射能の人体と環境障害をより多くに市民に知ってもらう活動が求められている(NEWS No.571 p01)

東日本大震災と福島原発事故から12年たちました。今も3万1千人の方々が避難生活を余儀なくされています。その大多数は原発事故による放射能汚染によるものです。福島原発の事故処理はこの1年間で大きな進展はないばかりか、汚染水の海洋投棄の決定や原発推進の政策が矢継ぎ早に進んでいます。

今号に福島敦子氏が、避難者として闘っておられる立場からこの状況を鋭く分析していただいていますので、ぜひお読み下さい。

それと表裏一体として、放射能による人間の障害が一切なく、将来も無いような似非医学研究報告が世界の医学雑誌に掲載されています。その中心になっているのが福島県立医科大学です。他方で、甲状腺がんをはじめとする放射線障害を証明した科学的な研究論文は極めて限定されています。

事故後、私たちはこの健康障害を明白にすることに取り組んできました。福島の放射線障害に関する学会発表、高松勇氏を中心に小児科学会・公衆衛生学会での研究集会への積極的参加、日本小児科学会での委員会の開催、健康相談会などでした。また放射線障害全般にわたる本と、甲状腺がんの多発に的をしぼった本を出版しました。ZENKOを始め、多くの運動団体には、それらの研究の成果を広める講演会などを開催していただきました。

また、福島での放射線障害を証明する科学的論文の少なさに危機感を抱き、放射線による健康障害の論文を発表されているドイツのハーゲン・シュアプの力で、福島の健康障害に関する、甲状腺がん・周産期死亡・低出産体重児の増加を証明する論文を書くことがでました。前2論文は福島の健康障害を否定した原発推進の国連科学委員会UNSCEAR2021年報告で全く非科学的な批判を受けるという「名誉」を得ました。

しかし、そのUNSCEAR報告では足りないと思ったのか、昨年12月には、福島県立医科大学が、「放射線の健康障害否定」論文の特集を出しています。

最も明白な甲状腺がんに関しては、3月3日に藤岡毅氏ら主催のシンポジウムで、津田敏秀氏などが放射線被ばくによる甲状腺がん異常多発否定の論協がいかに疫学の常識を外れたものであるか、まともな調査研究では異常多発が明白であることを明確にしています。甲状腺がんについての論文を書いた山本英彦氏が3月例会で報告し、今号に解説を書いています。

甲状腺がん以外の健康障害を証明した論文は、私たちの論文以外に、村瀬香氏らの先天性重症心疾患と、停留睾丸(精巣)、ドイツのコルブレイン氏の周産期死亡と早産児の論文程度と思われます。しかし、しっかりしたレビューをすると見つかるかも知れません。さらに、私たちの論文がなかなか掲載されなかったように、多くのすぐれた論文が発表されないままになっているのかも知れません。ご存じの方はぜひ教えてください。

今回の福島医大の特集には、2つの妊娠・出産に関連する論文が載せられており、いずれも大きなごまかしをしていると思われ、今号で検討していますので、ご覧ください。

高線量地域への帰還の半強制的推進や、放射性物質汚染水の海への放出、60年もたつ原発の運転延長、新原発の開発などは、核兵器開発の準備でもあります。

放射能の人体と環境障害をより多くに市民に知ってもらい、原発事故被害者の闘いと連帯する活動が求められています。