福島原発事故から13年 小児甲状腺がん多発を軸とする多様な健康障害は放射能被ばくによる点をさらに国内外に明らかにしていこう(NEWS No.583 p01)

福島第一原発(以下イチエフ)事故から13年が経過した。この13年間で、福島での小児甲状腺がんは300名を超えた。また放射線被害を恐れ福島県外に避難している人も、自主避難者も含め当初は16万人、いまなお2万人を超えている。東日本大震災後の岩手、宮城、福島3県からの県外避難者の93%を福島県民が占めている現状は放射線被害を恐れていることの顕れである。一方で国は福島の放射線汚染はチェルノブイリに比べはるかに少なく、恐れるのは風評被害であると括る。また小児甲状腺がんは放射線被ばくが原因ではなく過剰診断であるという立場をとりイチエフ事故による放射能汚染を無かったことにしようと躍起である。

私たちはまず、福島の放射能汚染は風評被害ではなく膨大な現実であり続いているという点を見なければならない。イチエフは北の浪江町、南の大熊町に存する。北の浪江町にはがれきや汚染服、車などが屋外のコンテナに放射性廃棄物として47万㎥にわたって放置され(2024年1月)、コンテナ腐食による廃棄物漏れのため28年度までに貯蔵庫が建設中である。大熊町では昨年8月から漁協との取り決めも無視されたまま福島第一原発(イチエフ)敷地内にたまった「ALPS処理水」の海洋投棄が始まり30年以上かかるとされる。汚染水浄化後のフィルターや汚泥をためる1000を超えるタンクが並ぶ。1-3号機で焼け落ちた燃料デブリは880トン、保管中の使用済み核燃料が12337体。推定放射性廃棄物は事故を起こしていない原発600基に相当する約780万トンと推定される。デブリ取り出し開始予定は今年10月とされるが、開始すら延期に延期を重ねている。取り出し完了2051年とされるがだれも信じていない。つまりイチエフ周辺に人は住めない。

このような中で放射能を恐れ避難することは当然であるが、国や福島県は避難者に対し補償を続けるどころか住居追い出しまで強行している。福島県は、東京地方裁判所に避難者の住む建物の明け渡しの強制執行を申し立て、2024年3月8日には地裁執行官が避難者宅を訪問し、1か月以内の退去を要請した。一方で復興庁は福島県市町村に対し「ふるさと復興費」として今まで1.2兆円を出している。

その他、全国の原発運転差し止め運動、訴訟に対しては、イチエフ事故直後の地裁や一部高裁で9件と相次いだ差し止め判決に対し(毎日新聞より)、最高裁判決、老朽原発の運転期間延期の法改正をバックに、強権的な差し止め運動、訴訟に対する弾圧を強めている。2024年3月には伊方、美浜原発訴訟での不当判決と矢継ぎ早である。女川原発、泊原発再稼働も視野に入れられている。

以上のような原発回帰、放射能汚染隠しの国策の中で、各方面での団結した対応が必要である。医問研としても、放射線被ばくに閾値線量はなく、健康と相いれないという基本的立場から、各地域再稼働阻止闘争への連帯、自主避難者への裁判闘争支援を今後とも続けて行く。特に2022年1月、東京電力ホールディングスを相手に起こされた、事故当時6か月から16歳までの7名の甲状腺がん罹患者による3.11子ども甲状腺がん裁判闘争に対する支援も行う。放射線被ばくによる甲状腺がん多発という真実を認めず、過剰診断/スクリーニング検査に原因を落とし込めようとする国内外の「専門家」に対する科学的論証をこれからも継続して示していき、事実を認めさせなければならない。