医薬品不足の現状を考える
近年問題になっている医薬品供給不足について、地域の保険薬局から報告を受け、地域医療の各現場の状況を論議しました。
ジェネリック企業の状況
2020年12月、小林化工の経口抗真菌剤で原料の取り違えで2人死亡。2021年2月業務停止命令の行政処分、2023年4月1日を以て医薬品製造販売業許可を廃止。2020年2月、日医工富山第一工場に無通告査察の実施。不正な製造に2021年3月、約1か月間の業務停止命令など続く。
保険薬局の状況
発注しても入荷せずで、他のメーカーもしわ寄せで需要過多となり、製造が追いつかずに限定出荷。
新型コロナ流行で解熱鎮痛薬や去痰薬の需要が多くなり、対応しきれない。原薬の海外依存も大きな原因と思っている。海外事情で入ってこない。
当薬局の状況
・近隣のクリニックに在庫状況をFAX。
・在庫のない場合は、近くの薬局に電話で在庫の有無を確認、あれば患者さんに行ってもらう。ない場合は、行かれたことのある薬局、自宅近くの薬局に電話して在庫を確認して在庫のある薬局に処方箋をFAX。どこにもない場合は、クリニックに電話して、処方変更をお願いしている。
・以前、非常に忙しい時、在庫がないとお断りしたら、どこの薬局に行ってもないと、2時間後へとへとで戻られたこともあった。その時は同意を得て、事情をクリニックに話し処方変更した。
・一人の患者さんへの対応に大変時間を要するので、本当は最初から処方変更してほしいが、医師もこだわりがあって、どうしてもこの成分でということがあります。
・一応、先発かジェネリックか希望を聞くが、在庫がなければ了解を得て、希望外を調剤する。
・以前は入庫を待つ患者さんもいたが、現在は入庫時期が未定の場合もあり待つことはしてない。
・在庫がないと以前は在庫のある薬局に分譲してもらったが、現在は在庫のある薬局を患者に紹介。
・以前はジェネリックから先発に変えることは認められなかったが、今は認められるようになった。
まとめとして今回の騒動の問題点⇒解決策
・ジェネリック医薬品の薬価の低さ
・価格競争と発売会社数の国の承認規制(5社位)
・メーカーもまともなことができる薬価にすべき。
・原材料の海外依存⇒国内、自社生産が好ましい
・製造過程など薬事監視体制の脆弱⇒強化、
などの提案がされました。
診療現場からの現状報告
開業小児科からはアセトアミノフェン、喘息薬、抗生剤がなく、薬局を4,5軒回ってもらった。別の開業医では、抗てんかん薬が入荷できず、この機会に院内処方を院外に変えたのに、薬局をたらい回しにされ、服用が滞ると重積となり生命の危険性におよぶこともある。精神科勤務医からは、トリプタノール、レボトミンなど基本的な薬剤が足りない現状が報告された。
論議での質問、意見など
・製造会社数5つ位は、ジェネリックメーカー全体でなく、1製品当りのメーカー数のこと。
・効かない無駄な薬は減らし、必要なものの薬価は上げていくべき。
・日本の医薬品の歴史では30年前はジェネリックと言わずゾロ品と言い、5,6割引で購入し先発薬価でぼろ儲けするなど構造的問題、いい加減な低品質薬剤の存在が切り込まれた。必要な薬は今の千分の一で良い、90歳に10種類の処方は無駄であり、不足になることで物の大切さが解り良い機会だが、エッセンシャルな薬剤の不足はまずい。
・調剤薬局は造語で院内から院外へ増えた時に使われ出した。処方箋で調剤するのは保険薬局が正式名称で添付文書で処方箋薬と書いているものは店頭で売れない。処方権を持つ医者は嫌がる。
・薬剤師の地位向上 医薬分業と6年間教育で病態を学び、薬局・病院実習が国家試験の条件に。
・薬局の夜間・休日体制の表示が始まり、薬局の特化・差別化による生き残りの時代。
地域の薬局の役割の理解を深める例会論議でした。
入江診療所 入江
医問研5月例会での補足的話題提供:基本的な薬剤が不足して治療に支障が生じる
5月例会では、薬剤師の三田さんの話題提供を補足する形で、精神科救急病棟を有する第一線の精神科臨床の立場から話題提供しました。以下、報告の内容です。
事例①:40歳代男性、うつ病症状が十分改善せず、休職中。否定的思考が目立つようになり、入院となった。紹介元のクリニック医師も三環系抗うつ剤のトリプタノール