2024年11月29日、福岡厚生大臣名で官報号外277号p266に厚生労働省令で急性呼吸器感染症の一部の改訂が公表された。わかりにくいためYahoo newsの解説をみると、「「普通の風邪を5類感染症に 厚労省が省令改正 国会議論も経ずに」とあった。つまり、「すでに5類感染症扱いとなっているCOVID-19や季節性インフルエンザなどと同様、一般的な風邪も届け出、監視や発表の対象となる。また、「特定感染症予防指針」にも位置付けられたため、風邪予防のワクチン開発も可能となる。」」ということらしい。
なにがどうなったのかわからないがえらいこっちゃという混乱の中で、もう少し整理する必要がありそうである。
感染症法上例えばペストやエボラ出血熱は1類、新型インフルは2類(季節性インフルは5類)などであったが、新型コロナ感染症COVID-19は当初2類相当、2023年5月8日から5類感染症となった。インフルは急性呼吸器感染症(ARI)として「インフルエンザに関する特定感染症予防指針」により総合的な対策方針が定められているが、今後、COVID-19に対する中長期対策の方向を定めるためとされ、2023年1月の感染症部会での「将来的なパンデミックに備えて、季節性インフル、新型コロナウイルス感染症、RSウイルス感染症等を含む急性呼吸器感染症サーベイランスのあり方や、5類感染症病原体定点を活用した変異株モニタリングを含む5類感染症サーベイランスのあり方等について」感染症部会での検討が了承された。現在のインフルエンザに関する「特定感染症予防指針」を廃止し、急性呼吸器感染症に関する「包括的な特定感染症予防指針」を目指すとされていた。
現実的には、急性呼吸器感染症とは何ぞやという疑問が持ち上がる。感染症部会では、急性の上気道炎(鼻炎、副鼻腔炎、中耳炎、咽頭炎、喉頭炎)あるいは下気道塩(気管支炎、細気管支炎、肺炎)を指す病原体による症候群の総称とされる。そのすべてを把握することは不可能である。そのためジフテリア、鳥インフルエンザ、その他の人畜共通感染症や、すでに5類把握のクラミジア、マイコプラズマ肺炎、百日咳、インフルやCOVID-19,ヘルパンギーナ、RSウイルス感染症などを除き「既に感染法上位置付けられている急性呼吸器症状を呈する感染症を除く急性呼吸器感染症」と定義されているが現場は大混乱必至だろう。
2024年12月から8月16日まで、改正省令案についてのパブコメをおこなったところ、31546件の意見が集中した。「非常に幅広い病原体、症状を含んでおり、その全てが法による監視が必要な疾患であるとは思えない」「風邪等を含む5類指定に反対」「医療機関から届け出させるのに反対」「届け出させると医療機関の負担になるのではないか」「風邪による検体の採取,提出に反対」「風邪の患者数を把握しても意味が無い」「現在の5類に該当しない疾病を5類に指定するのは、後にサーベイランス以外の各種の対策を行う理由にできるため、必要最低限の措置に抑えるという感染症法の精神に反するため行うべきではない」「省令改正による5類感染症の追加は手続きが妥当でない」「部会論議が尽くされていないのではないか」など、賛成という意見の紹介はない。これらを受けて、厚労省は、省令の一部施行を2024年10月28日としていたが、自治体や医療機関等における施行準備期間を考慮して2025年4月7日と改めるとした。
省令でできる範囲を超えているのではないか?
KEIYAKU WATCHによれば、法令の形式によると以下の表が示される。
憲法を最上位として、以下国会による法律、法律の次に効力を持つものとして衆参両院での議員規制、最高裁判所規則。以下憲法・法律を実施するために制定されるルールとして以下の順に内閣による政令、各省大臣による省令、委員会、長官によるその他の命令がある。政令以下は法律の委任がない限り国民の権利制限、義務を課すルールを定めることはできない。こうみると、感染症部会での論議の有効性は疑わしいのでないか。
その他に、インフルやCOVID-19 をはじめRSウイルスやマイコプラズマ肺炎などだけでなく、既存の5類感染症の届け出にとどまらない「風邪」への薬剤使用、ワクチン接種の強制などの狙いもある可能性もある。