先月号では、西欧文化諸国の超過死亡を、論文を中心に紹介しました。それによると、新型コロナパンデミックへの対策との関連で大まかに、以下のような結果でした。超過死亡は2020年の「封じ込めのみ」政策では11.4%増、2021年の「封じこめ」+「ワクチン」で同13.8%増、2022年の「ワクチン」で同8.8%でした。それらの対策にも関わらず、2022年まで超過死亡が続いた原因についてワクチンの効果と害作用も含めて、科学的分析が必要だ、と結論していました。
今回は、2022年と2023年に日本で生じた東日本大震災を上回る超過死亡と、ワクチンの追加接種率(元のワクチン接種プロトコルで規定された量を超えて投与される投与量の国民人数に対する接種回数、日本では3回以上の接種)を見てゆきます。
<日本の追加接種率の位置>下表は、追加接種の率を2023年12月のOur World in DataからNHKがまとめたアジアとヨーロッパの8カ国のものです。(図1)
一番上の日本がとびぬけて多く、142%(国民一人が1.4回)接種されています。ところが、西欧諸国では、イタリアが81%、カナダ79%、ドイツ78%、フランス70%、イギリス60%アメリカ40%などです。アジアで日本に地理的にも近い韓国は80%で、ほとんどの国が90%未満です。
年度としては、2023年になると、日本以外の国ではコロナワクチン接種はわずかしかされていません。図2は、縦軸は接種を受けた国民の率(%)、横軸は2021年8月から2024年8月までの期間です。曲線は、ある時期の接種率を表しています。曲線の左端が発表されている最後の率です。それの一番上が日本でずば抜けて多く、140%を超えています。以下、カナダ、イタリア、韓国、ドイツ、フランス、英国、米国です。線の右端が最後に発表されている時期です。他の国々は、2022年10月ごろよりほとんど増えていません。日本以外の国々では、2022年末以後はほとんど増えていないのです。日本が2023年に100%を超え、他の国は2023年にはほとんどワクチンをしていないことになります。Our World in Data – 最終更新日 2024 年 4 月 17日)(図2)
以上より、追加接種の実施率は日本が世界的に最も高く、かつその他の国の1.5倍(ヨーロッパ諸国や韓国より)から3倍ほど(米国より)の追加接種率です。しかも、日本以外では2022年後半以後はほとんど増えていないのに、日本では2022年後半以後水準を超え、2023年にも引き続き増加していることが明白です。
<アジア・西欧の超過死亡の推移>それでは、超過死亡率とその推移がどうなっているのかを見てゆきます。今回は、超過死亡をある程度はっきりできる国を選んで日本とアジアと西欧の一部の国を比較します。イギリスなど、超過死亡が大きく変動しており、私の能力では推定できない(イギリス政府自体が当初の推定超過死亡率を大幅に修正しています)国や、線形回帰と2項回帰曲線の結果に大きな違いがあったり、どちらでもR2乗が0.9より低い場合は除外しました。)下図・表のように、2020年から始まったコロナパンデミックはアメリカやヨーロッパで超過死亡を引き起こし、2021年をピークに下がりました。しかし、アジアの3国では超過死亡は2021年に始まり、2022年をピークに下がっています。日本を除き2023年には超過死亡が無くなったり、前年の5割(韓国)、3割(ドイツ)に減少していますが、日本は同77%であり、あまり減少していません。日本の追加接種が世界でダントツであった点と関連が疑われます。(表1)
<文献として発表されているデータから超過死亡と追加接種の関連>オーストラリアでは、下表のように追加接種の年度別の率と、超過死亡率の年度別比率の推移が大変よく似ています。(表2)
下図は、追加接種率(縦軸)と超過死亡率(横軸)の関連をみたものです。比較的よく関連している可能性を示しています。(図3)
ヨーロッパはコロナパンデミックが日本より早期に始まり、コロナ死亡者も早期に増加したため、2023年には日本と比べて早期に収束したのではないか?との疑問もあります。その点を、日本と同様に欧米よりも遅く流行したアジアの韓国・日本・シンガポールを比較した論文のデータで検討しました。この論文からは、ワクチン接種の「追加」以外にも「接種率」、「接種完了:2回」、「追加接種」の国民に対する率が記載されています。 https://doi.org/10.1186/s12939-023-02034-x
これによれば、ワクチン接種率は、韓国, 日本, シンガポールの順に86.4%、84.4%,91.5%、2回完了の接種率は、それぞれ85.6%, 83.3%, 90.8%と、3国はほとんど同じでした。しかし、追加接種率は、それぞれ79.7%, 141.7%, 78.7%で、日本は他の国の2倍近い追加接種率でした。(表3)
表1で、超過死亡率を比較しますと、2022年で韓国1.1、日本1.22、シンガポールは0.84でこれも似ていました。しかし、23年にはそれぞれ0.55、0.94、-0.39と大きな差が出ています。また、2022年と比べ2023年では韓国が50%減少ですが、日本はより減少が少なく77%でした。シンガポールは一層減少し、マイナスになっており、日本以外の2国が大幅に減っています。これは、日本では2022年後半から23年にかけ、追加接種が激増し、他の国ではあまり増えなかったことと関連しているとも考えられます。
以上、日本政府が強力な追加接種奨励政策で実現した世界に例を見ない追加接種増が、むしろ2023年の世界に例のない超過死亡をもたらしたとも考えられます。逆に世界に見習って追加接種を止めていれば、少なくとも2023年の超過死亡を大幅に防げた可能性が考えられます。もちろん、前回紹介の論文が主張するように、コロナワクチン全体を含めた、新型コロナに対する政策の総合的評価は、東北大震災を上回る超過死亡の犠牲者と、これからもワクチンを推奨されている国民にとって必須であり、早急な科学的分析が求められています。
(はやし小児科 林敬次)